「AIで、そんな仕事をするなんて」
先日、ある先生に言われた言葉です。
AIと聞くだけで、なんだか気が重い。
興味はあるけれど、何から触ればいいか分からない。
そんなあなたに向けて書きました。
この記事では、文部科学省が示している生成AIの方針と、特別支援教育での教材づくりの実例をお伝えします。
記事の後半に、10分で「その子だけの教材」を作る3ステップと、そのまま使えるAIへの頼み方の文例も載せています。ぜひ最後まで読んでみてください。
「AIで、そんな仕事をするなんて」という空気、ありませんか?

職員室で、こんな声を聞いたことはありませんか。
・「AIって、なんだか怖い」
・「自分には難しそう」
・「今までの方法で十分じゃない?」
・「AIに頼るのは手抜きな気がする」
口には出さなくても、近い気持ちの先生は多いはずです。
興味はあるのに、周りの空気で言い出せない。そんなあなたの感覚は、おかしくありません。
実は私も先日、真正面から言われました。
私は22年間、特別支援学級の担任をしてきました。
今は、AIを使って特別支援教育の教材を作ったり、先生たちに活用方法を伝えたりしています。
ある先生に「今どんな仕事をしているんですか?」と聞かれて、そう答えたときのこと。
返ってきたのが、
「AIで、そんな仕事をするなんて……」
という一言でした。
相手は大ベテランの先生です。その場では言い返せませんでした。
でも心の中では、モヤモヤ。そして、だんだん腹が立ってきました。
ただ、現場の空気がどうであれ、国の方針は大きく動いています。
文部科学省は「先生もAIを学ぶ」方向へ動いています

「AIは個人の流行でしょ?」と思われがちですが、そうではありません。ここでは、文部科学省の公式な動きを3つだけ紹介します。
① 生成AIガイドライン(Ver.2.0)
文部科学省は「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」で、基本的な考え方を2つ示しています。
- 人間中心の生成AIの利活用
- 生成AIの存在を踏まえた情報活用能力の育成強化
そして校務については、生成された内容の適切性を先生が判断できる範囲で、積極的に活用することは有用だとしています。

② 文部科学大臣が「AI教育の充実」を明言
2026年7月の大臣記者会見では、次の方向性が説明されました。
- 小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域」を加える
- 中学校に「情報・技術科」を新設する
- メディアリテラシーやAIなどの内容を大幅に充実させる
- 小・中学校の先生を対象とした研修や教材開発を進める

出典:松本洋平文部科学大臣記者会見録(2026年7月10日)
③ 次期学習指導要領に向けた「審議まとめ素案」
2026年8月31日には、文部科学省の審議会で、次期学習指導要領等に向けた審議まとめの素案が示されました。子どもたちがAIを正しく学び、使うための内容が盛り込まれています。
※現段階ではあくまで「素案」で、決定ではありません。文部科学省の資料では、前回と同様のスケジュールを仮定すると早ければ2028年度から一部先行実施の見込みとされています。
つまり今は、「AIを使うか、使わないか」ではなく、「どう使うか」を考える段階に入っています。
ぷーた先生「国が動いてから」ではなく、動き始めた今のうちに、小さく触っておくのがいちばんラクです
それでも、教室にAIが広がらない理由


方針が示されても、現場はすぐには変わりません。理由ははっきりしています。
・そもそも試す時間がない
・何に使えるのか、具体例を見たことがない
・失敗したときに、誰にも聞けない
・「手抜き」と思われそうで、言い出しにくい
特に特別支援学級では、一人ひとり実態が違います。
市販の教材がそのまま使えないから、手作りが増える。
手作りが増えるから、時間がなくなる。
「便利そうな話は聞くけど、それどころじゃない」。
それが正直なところではないでしょうか。
あなたのせいじゃない。「便利さを具体的に知る機会」がなかっただけ


新しいものを怖いと感じるのは、自然なことです。
能力の問題ではありません。
私も、新しいものを拒否していました


実は私自身、以前はYouTubeに対して、
「YouTubeで授業をするの?」
「なんだか怪しいサイトじゃない?」
と思っていました。
ところが、ある先生から「YouTubeは、こんなふうに授業で使えるよ」と具体的に教えてもらった瞬間、印象が一気に変わりました。
人が新しいものを受け入れられないのは、便利さや安全な使い方を、まだ具体的に知らないからです。
洗濯機を使うことは「手抜き」ではない


昔は、洗濯物を一枚ずつ手で洗っていました。
もし今、「洗濯機で洗うなんて、心がこもっていない」と言われたら、どうでしょうか。
「いやいや、洗濯機を使っていいでしょう」と思いますよね。
AIも同じです。
任せられる部分は任せて、生まれた時間を、もっと大切なことに使う。
「この子は、何に困っているんだろう?」
「何を伝えたら、安心できるだろう?」
それを考えるのは、これからも先生です。
AIを使うことは、先生が考えることをやめることではありません。
先生の専門性×生成AI|教材づくりの実例と手順


ここからが本題です。役割分担を先に整理すると、こうなります。
| 先生にしかできないこと | AIに任せられること |
|---|---|
| 子どもの実態をつかむ | 文章・イラスト・問題の下書きを作る |
| 「この子に合うか」を判断する | 難易度やことば遣いを言い直す |
| 子どもの反応を見て手直しする | 同じ形式で何枚も量産する |
子どもへの理解は先生が持ち、形にする作業をAIが手伝う。
この組み合わせで、こんな教材が短時間で作れます。
- オーダーメイドのプリント:その子の興味(電車・恐竜など)を題材にした計算・読み取り問題
- ソーシャルストーリー:生活面や友達関係の課題を、分かりやすい物語に
- 4コマ漫画教材:言葉だけでは伝わりにくい場面を、見て分かる形に
- 視覚支援カード:手順表・気持ちの温度計・スケジュールカード
- 文章の言い換え:学級通信や指示文を、その子が読める難易度・ふりがな付きに
10分でできる3ステップ


やることは3つだけです。
- その子の「困り」と「好き」を、ひとことで言葉にする
- AIに、対象・目的・条件を伝えて下書きを作らせる
- 出てきたものを、先生の目で直してから使う
AIへの頼み方は、難しく考えなくて大丈夫。たとえばこう伝えます。
「小学2年生で、ひらがなが読みやすい子に向けて、『順番を待てるようになる』ことを教える4コマ漫画の案を作ってください。その子は電車が大好きです」
ポイントは、対象(学年・実態)・目的(何を教えるか)・その子の好きなものの3つを入れること。
これだけで、出てくるものがまったく変わります。



主役はあくまで、その子のいちばん近くにいるあなた。AIは「下書き係」です
ここで失敗しました|3年前、指導案づくりで挫折した話


偉そうに書いていますが、実は私、3年ほど前にAIで道徳の指導案を作ろうとして、挫折したことがあります。
何度もやり直したのに、出てきたものはいまいち。
労力がかかった割に、そのまま使えるものにはなりませんでした。
振り返ると、原因は2つです。
当時のAIの精度と、私の「頼み方」。
対象・目的・条件を伝える、というさっきの3つを知らなかったのです。
いま同じことをすると、下書きは10分で形になります。
道具は進化しますし、頼み方はコツを知れば変わります。
一度あきらめたことがある方にこそ、もう一度だけ試してみてほしいのです。
注意|AIの答えを、そのまま子どもに出さない


AIの下書きには、事実の間違いや、その子に合わない表現が混ざることがあります。
最後に先生の目で確かめる。ここだけは省略できません。
ガイドラインが「適切性を判断できる範囲で」としているのも、同じ理由です。
逆に言えば、子どもを深く知っている特別支援の先生ほど、AIを使いこなせるということです。
特別支援教育×生成AIのQA(担任向け)


- 学校でAIを使っても大丈夫?
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文部科学省のガイドラインでは、校務での活用は有用とされています。ただし、AIの利用ルールは自治体や学校によって違います。使い始める前に、管理職や教育委員会の方針を確認してください。「校務でAIを使う場合のルールはありますか?」と聞けば十分です。
- 子どもの個人情報を入力してもいい?
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入力しないでください。名前・診断名などはそのまま入れず、「小学2年生・ひらがなが読みやすい子」のように、実態だけを言葉にして伝えれば、教材づくりには十分です。
- 無料でも作れますか?
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作れます。ChatGPTなどの無料版でも、プリントの下書きやソーシャルストーリーの文章は十分作れます。まずは無料の範囲で、1枚作ってみるのがおすすめです。
- AIで作った教材は「手抜き」になりませんか?
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なりません。洗濯機で洗濯をしても手抜きと言われないのと同じです。どんな教材が必要かを考え、最後に合うかどうかを判断しているのは先生です。浮いた時間で子どもの表情を見たり、話を聞いたりできることのほうが、ずっと大切です。
まとめ|子どもを知っているあなたが、AIをいちばん使いこなせる


特別支援教育でAIをどう使うか。
答えは、先生の専門性とAIを組み合わせること。
子どもを知っているのは、あなた。
形にするのを、AIが手伝う。
まずは1枚、「その子だけの教材」を作ってみてください。











