自己評価シートの用紙を前にして、手が止まる。
そんな時間、過ごしていませんか。
通常学級の先生なら「学力を◯%上げる」と書けます。
でも支援学級だと、何を成果にすればいいのか分からない。
この記事では、自己評価シートに書く目標の作り方と、そのまま使える記入例を30例まとめました。
児童理解・授業づくり・学級経営・保護者連携・不登校対応・校内連携の6つに分けています。
記事の後半に全部載せているので、使えそうなところだけ持ち帰ってください。
なお、このシートの呼び方は自治体でばらばらです。自己申告書・自己申告票・目標申告シートなど、地域によって違います。ご自分の学校の様式に読み替えながら見てください。
書けないのは、あなたの実践が足りないからではない

毎日やっていることは、たくさんあります。
- 朝、その子の顔色を見て今日の予定を組み替えた
- 友だちとぶつかったとき、あいだに入って通訳した
- 保護者からの連絡帳に、その日のうちに返事を書いた
でも、いざ用紙に向かうと書けない。
数字にならないからです。
「今日は落ち着いて過ごせた」を、どう数値化しろというのか。
そう思ったことはありませんか。
「児童の実態」から書くと、書くことは見つかる

先に結論をお伝えします。
支援学級の自己評価は、児童の実態ありきです。
ぷーた先生私は22年間、いつもここから書いていました。実態が分からないと、授業も学級経営も話にならないんです。
「児童の実態」を見取れるような学級経営をする
これが土台です。逆に言えば、実態把握そのものが立派な目標になります。
そして実態が見えてくると、数値目標も自然に決まります。
「この子は今、ひらがなが7割書ける」
そこが分かって初めて「1年で9割」という目標が立つからです。
数値が出せない、という壁


自己評価シートは、たいてい「数値で表すように」と言われます。
ここで多くの先生が詰まります。
支援学級の子どもたちは、一人ひとり違います。学年の平均では測れません。
そして通常学級のように、クラス全体のテストの点数が出るわけでもない。
だから「学力を10%上げる」と書けない。
書けないまま、当たり障りのない言葉で埋めてしまう。
あなたのせいじゃない。そもそも様式が通常学級向けだから


自己評価シートの様式は、通常学級を前提に作られています。
学級平均、単元テスト、学力調査。どれも「同じ内容を同じペースで学ぶ」ことが前提です。
支援学級は、そもそもその前提の外にあります。
だから書きにくいのは当然です。あなたの実践が薄いからではありません。
書き方を変えれば、書けます。
数値目標を作る4つの原則


支援学級で数値を出すときは、この4つで考えると決まります。
1. 教科全体ではなく、1年で届く単位に割る
いちばん大事なところです。
「1年生の算数のテストで平均◯点」のように教科全体で目標を立てると、苦手な領域が1つあるだけで届かなくなります。
そうではなく、細かく割ります。
❌ 算数のテストで70点以上を取れるようにする
✔ 九九の2の段から5の段までを暗記できるようにする
❌ 国語の力をつける
✔ ひらがなの読みを、7割から9割にする
「1年かけたら、これは届きそうだな」と自分で思えるところに置く。それが正しい目標です。
2. 一人の数値と、学級の平均、両方が使える
個別の目標も書けますし、学級全体の平均でも書けます。
- 個人で書くなら「A児の漢字テストの平均点を、50点から70点にする」
- 学級で書くなら「学級全体のひらがな習得率を、平均で15%上げる」
どちらでも構いません。書きやすいほうで。
3. 相手が動くことを目標にしない
これがいちばん大事な原則です。
子どもや保護者が動くことを目標にすると、うまくいきません。
理由は次の見出しで詳しく書きます。
4. 自分の行動を目標にする。ただし相手の事情で無理になるものは避ける
自分がやることなら、自分でコントロールできます。
でも「毎日電話をする」のような目標は、相手にとって迷惑になることがあります。
自分の行動なら何でもいい、というわけではありません。
ここで失敗しました|不登校の子の目標を「週1登校」にした


私が実際にやってしまった失敗です。
月に2回ほどしか登校できない子がいました。その子について、自己評価シートにこう書きました。
週1回の登校を目指す
これがよくありませんでした。
まず、こちらが焦ります。数字を追いかけるようになって、その子のペースが見えなくなる。
そして何より、相手が動くことが目標になっている。
登校するかどうかを決めるのは、その子です。私ではありません。
さらに不登校の場合は、保護者の状況も絡みます。家庭の事情、きょうだいのこと、お母さんの体調。こちらがどれだけ頑張っても、動かせないものがあります。



動かせないものを、目標に書いてはいけない。これは自己評価シートに限らない話だと思います。
では、どう書けばよかったか。自分の行動を目標にすればよかったのです。
- 週に1回、その子に何かを届ける
- 保護者だけでも来てもらえる機会を作る
- オンラインで週1回、顔を見る時間を作る
これなら、その子が登校できなくても達成できます。そして結果として、つながりは切れません。
ただし、ここにも続きがあります。
「毎日電話をする」という目標も、私はやめました。
自分の行動ではあります。でも毎日かかってくる電話が、保護者にとって負担になることがある。相手には相手の事情があります。
自分の行動であり、かつ相手の負担にならないもの。そこまで考えて選びます。
自己評価シートの記入例30


ここからが本題です。6つの領域に分けて、30例あげます。
◯△□の部分は、ご自分の学級の実態に置き換えてください。



これはあくまで一例です。この書き方が絶対に正しいということではありません。評価の仕方も様式も自治体で違うので、参考までにご覧くださいね。
児童理解・実態把握(5例)
支援学級の土台です。ここが書けていると、他の項目も書きやすくなります。
| 記入例 | どこを数字にするか |
|---|---|
| 4月中に全児童の実態把握シートを作成し、9月と1月に更新する | 作成の期限と更新の回数 |
| 各教科の中に個別の課題に取り組む時間を位置づけ、週◯回実施する | 週あたりの回数 |
| 月1回、全児童の記録を読み返し、支援の手立てを見直す | 見直しの頻度 |
| アセスメントの結果と日々の様子を突き合わせ、学期ごとに実態を整理する | 整理する回数(学期=3回) |
| 児童の実態を見取れる学級経営を行い、個別の指導計画に反映させる | 数字なしでも可。土台の1行として |


授業づくり(5例)
数値を入れるなら、この領域がいちばん入れやすいです。
| 記入例 | どこを数字にするか |
|---|---|
| 九九の2の段から5の段までを暗記できるようにする | 段の範囲。全部の段にしない |
| ひらがなの読みの習得率を、7割から9割に引き上げる | 習得率の現在地と目標 |
| A児の漢字テストの平均点を、50点から70点にする | 個人の平均点 |
| 学級全体のひらがな習得率を、平均で15%上げる | 学級平均の伸び幅 |
| 時計の読み取りを「◯時」から「◯時◯分」まで広げる | 読み取れる単位 |
学級経営(5例)
「落ち着いた学級」を数値にするのが難しい領域です。行動の回数で切り取ります。
| 記入例 | どこを数字にするか |
|---|---|
| 朝の会の流れを視覚化し、支援なしで動ける児童を◯人に増やす | 自分で動ける人数 |
| 教室内の物の定位置を決め、片づけを自分でできる児童を◯人にする | 同上 |
| 1日の予定を毎朝提示し、見通しをもって行動できる場面を増やす | 提示の頻度(毎朝=◯回) |
| トラブル時の対応の手順を統一し、支援員と月◯回共有する | 共有の回数 |
| 視覚支援の教材を全単元で用意し、指示が一度で通る場面を増やす | 用意した単元数 |
保護者連携(5例)
相手が動くことを目標にしない、という原則をここでも使います。
| 記入例 | どこを数字にするか |
|---|---|
| 連絡帳に週◯回、その日できたことを具体的に書いて伝える | 書く回数 |
| 学期に1回、家庭での様子を聞き取る機会を設ける | 面談・聞き取りの回数 |
| 個別の指導計画を保護者と一緒に確認し、目標をすり合わせる | 確認する回数(年◯回) |
| 行事の前に、参加の形について保護者と事前に相談する | 相談する行事の数 |
| 月1回、学級の様子を写真つきの通信で届ける | 発行の回数 |
不登校・欠席がちな子への対応(5例)
登校日数を目標にしません。自分が届ける行動を書きます。
| 記入例 | どこを数字にするか |
|---|---|
| 週に1回、学習プリントや手紙をその子に届ける | 届ける回数 |
| 保護者だけでも来校できる機会を、月1回設ける | 設ける回数 |
| オンラインで週1回、顔を見て話す時間をつくる | つないだ回数 |
| 本人が興味をもっているものを1つ見つけ、それを使った教材を用意する | 用意した教材の数 |
| 校内の関係者と月1回情報を共有し、対応を一本化する | 共有の回数 |
校内連携・交流学級(5例)
一人で抱えないための項目です。書いておくと動きやすくなります。
| 記入例 | どこを数字にするか |
|---|---|
| 交流学級の担任と月1回、児童の様子を共有する時間をもつ | 共有の回数 |
| 交流先での支援の手立てを文書にして渡す | 渡した人数・枚数 |
| 特別支援教育コーディネーターと学期に1回、ケース会議を行う | 会議の回数 |
| 支援員との打ち合わせを週1回、10分でも定例化する | 打ち合わせの回数 |
| 校内研修で支援学級の実践を年1回報告する | 報告の回数 |
様式は自治体で違います。中身だけ持ち帰ってください


ここまでの記入例は、中身は流用できます。
ただし手順と様式は、必ず自校のものを確認してください。
呼び方からして違います。実際に調べてみると、こうでした。
| 自治体 | 呼び方 |
|---|---|
| 東京都 | 人事考課制度の「自己申告」(自己申告書) |
| 大阪府 | 評価・育成システムの「自己申告票」 |
| 千葉県 | 「目標申告シート」で業績評価 |
| 埼玉県 | 教職員評価システムの「自己評価シート」 |
| 栃木県 | 「能力・行動自己評価シート」と「目標・成果自己評価シート」の2枚 |
栃木県のように2枚に分かれているところもあれば、1枚で済むところもあります。項目の数も、評価の段階も、提出の時期も自治体でばらばらです。東京都は4月1日・10月1日・3月31日が基準日と決まっています。
確認する相手は、特別支援教育コーディネーターか、同じ学校の支援学級担任の先輩です。
こう聞いてみてください。
「支援学級では、この欄にどう書いておられましたか。去年のものを見せていただけませんか」
過去の様式を見るのがいちばん早いです。


特別支援学級の自己評価シートのQA(担任向け)


- 数値目標が、どうしても思いつきません。
-
実態把握から始めてください。「今この子は何が何割できるか」が分かると、目標は自動的に決まります。分からないうちに目標だけ作ろうとすると詰まります。
- 目標が達成できなかったら、評価は下がりますか。
-
正直なところ、分かりません。私は管理職ではないので、評価がどうつけられているかは見えないからです。分かるのは自分のことだけですが、このシートの制度が始まってから給料が下がったことはありませんし、昇給も順調にきています。評価の仕方そのものが自治体で違うので、心配なら校内の先輩に聞くのがいちばん確かです。
- 児童の名前を書いてもいいですか。
-
自治体によります。イニシャルや「A児」とする運用が多いですが、提出先が校内のみか教育委員会まで行くかで扱いが変わります。コーディネーターに確認してください。
- 異動してきたばかりで、実態が分かりません。
-
それなら「実態把握そのもの」を第一の目標にして構いません。「4月中に全児童の実態把握シートを作成する」は、立派な目標です。
- 目標は何個くらい書けばいいですか。
-
様式の欄の数に合わせます。ただし欄が多くても、細かい目標を複数書くほうが達成しやすいです。大きな目標を1つ書くより現実的です。
特別支援学級の自己評価シートのまとめ


特別支援学級担任の自己評価は数字をひねり出すことではなく
実態から積み上げること。
そして
相手が動くことを、目標に書かないこと。
まずは、実態把握の1行から書いてみてください。
それでも、自分の学級について書けないときは


ここまで読んでも、たぶんまだ手が止まると思います。
「うちのクラスの、あの子の場合はどう書けばいいんだろう」
それは当然です。
この記事に書けるのは一般的な型までで、あなたのクラスの子どもたちのことは、一文字も書いていないからです。
自己評価シートが書けないときは、たいてい目標の作り方が分からないのではなく、その子の実態を言葉にしきれていないときです。
「なんとなく落ち着いてきた」
「前より話せるようになった」
分かってはいるけれど、数字にならない。そこで止まります。
そういうときは、一度、人に話してみてください。
私でよければ、お子さんの様子をうかがって、どこを目標にできそうか一緒に探します。
答えを決めるのは、あなたです。私は材料をお渡しするだけです。
一人で用紙とにらめっこする時間が、少し短くなればと思っています。
\ 一人で抱え込まないで! /











