「個別の教育支援計画、書き終わりましたか?」
年度はじめ。
机の上に、似た名前の様式が2枚。
個別の指導計画。
個別の教育支援計画。
——で、どっちがどっち?
そう思いながら、去年のファイルを開いて写していませんか。
「個別の指導計画と個別の教育支援計画は何が違うの?」と思いながら書いていませんか
私は特別支援学級の担任時代にこの2つを、書いてきました。
でも最初の年、違いをちゃんと説明できませんでした。
- 名前が似ている
- 様式も似ている
- 提出時期も近い
だから、こうなります。
・とりあえず去年のを写す
・空欄が残ったまま提出する
・出したあと、どこにあるか分からなくなる
これは、あなたの理解力の問題ではありません。
ぷーた先生私も最初は、違いを説明できませんでした
書き方が分かると、進学先で「本当に使われる」計画になる
違いが分かると、こう変わります。
- 何を書く欄なのかで迷わなくなる
- 空欄が埋まる
- 保護者との面談で話す材料になる
- 進学先の先生が実際に読んでくれる
いちばん大きいのは最後です。
中学校の先生が「この子はこう支援すればいいんだ」と分かる状態で渡せる。
書類が、子どもの味方になります。
個別の教育支援計画が「作って終わり」になる3つの場面
現場でよく起きるのは、この3つです。
① 「本人・保護者の願い」の欄が埋まらない
面談で聞いたつもりなのに、書こうとすると手が止まる。
「元気に過ごしてほしい」
——これしか出てこない。
② 関係機関の欄に何を書くか分からない
放課後等デイサービス、病院、相談支援事業所。
関わっているのは知っている。
でも、何をどこまで書いていいのか分からない。
③ 進学先に届かない
これがいちばんもったいないパターンです。
時間をかけて書いた。
保護者にも渡した。
なのに、中学校で使われていない。
あなたのせいじゃない。この2つの違いは、誰も教えてくれない
引き継ぎのとき、こんなふうに言われませんでしたか。
「様式はあるから、書いといて」
違いの説明は、ありません。
研修でも、ほとんど扱われません。
だから、分からないまま書いている先生がとても多いです。
実は違いは、この1枚で整理できます。
| 個別の指導計画 | 個別の教育支援計画 | |
|---|---|---|
| 見る時間の幅 | 学期・年間 | 数年〜卒業後、就職まで |
| 中心になるもの | 授業と指導 | 生活全体と連携 |
| 誰と作るか | 主に学校の中で | 保護者・関係機関と一緒に |
| 何を書くか | 目標・指導内容・手立て・評価 | 願い・長期目標・支援体制・引き継ぎ |
| どこへ渡るか | 校内で使う | 進学先・関係機関へつなぐ |
ひとことで言うと、こうです。
指導計画は「今学期どう教えるか」。
教育支援計画は「この子を誰とどう支えていくか」。
書く時間の幅と、関わる人の数が違います。


個別の教育支援計画の書き方|5つの欄をこの順で埋める
順番があります。上から埋めようとすると詰まります。
- 本人・保護者の願い ← ここが出発点
- 長期目標(願いを数年の姿にする)
- 学校での支援(目標に近づくために学校がすること)
- 関係機関との連携(学校の外で支えている人)
- 引き継ぎ事項(次の学校に伝えたいこと)
❌ 目標から書く
✔ 願いから書く
願いが決まると、下の4つが自然に決まります。
【注意】様式も引き継ぎ方も、自治体によって違います
記入例に入る前に、必ずお伝えしたいことがあります。
個別の教育支援計画は、自治体や教育委員会によって扱いが違います。
違うのは、この点です。
・様式と欄の名前
・呼び方(別の名称を使う自治体もある)
・作成の時期と更新の回数
・保護者への交付方法と同意の取り方(押印の要否)
・進学先への引き継ぎの手順
同じ県の中でも、市町村で違うことがあります。
となりの市から異動してきた先生が戸惑うのは、これが理由です。
だから、書き始める前にこの3つを確認してください。
- 自校の様式と記入要領(教育委員会が手引きを出していることが多い)
- 保護者への交付方法と同意の取り方
- 進学先への引き継ぎの手順(学校間で直接か、保護者経由か)
分からないときの聞き先はここです。
✔ 「教育支援計画の様式と引き継ぎの手順、確認させてください」
特別支援教育コーディネーター、または教育委員会の特別支援教育担当に聞けば教えてもらえます。
この記事に載せている記入例は、どの様式でも共通して問われることを書いています。
欄の名前が違っても、中身はそのまま使えるはずです。



手順だけは、必ず自分の学校のルールを確認してね
個別の教育支援計画の記入例18例|小学校編
そのまま使える形で載せます。子どもの実態に合わせて言葉を差し替えてください。



使えそうなところだけ、持っていってね
本人の願い(3例)
- ともだちと あそべるように なりたい
- じぶんで しゅくだいを おわらせたい
- おおきなこえが こわいので しずかなばしょが ほしい
低学年は、話した言葉をそのまま残すと伝わります。
保護者の願い(3例)
- 身のまわりのことを自分でできるようになってほしい
- 友達との関わりを通して、人と一緒にいる楽しさを知ってほしい
- 中学校でも本人が安心して過ごせる場所を用意してほしい
長期目標(3年後の姿)(3例)
- 生活に必要な場面で、自分から言葉や身振りで要求を伝えられる
- 見通しがあれば、初めての活動にも自分から参加できる
- 苦手な刺激があるとき、自分で休憩を求めることができる
学校での支援(3例)
- 一日の予定を絵カードで示し、変更があるときは朝のうちに伝える
- 集団活動は、参加時間を短く区切って設定し、成功体験を積む
- 教室内に静かに過ごせる場所を用意し、本人の判断で使えるようにする
関係機関との連携(3例)
- ○○病院(小児科):年2回受診。服薬の状況を保護者経由で共有する
- 放課後等デイサービス○○:週3回利用。学校での様子を連絡ノートで共有する
- ○○市子ども発達支援センター:年1回の巡回相談で支援方法の助言を受ける
事業所名と頻度、そして何を共有しているかまで書くと、次の学校が動けます。
引き継ぎ事項(3例)
- 予定変更は、当日の朝までに口頭と文字の両方で伝えると混乱が少ない
- パニック時は声をかけず、静かな場所へ移動して5分待つと自分で戻れる
- 家庭では就寝時刻が遅くなりやすく、疲れが月曜に出ることがある
個別の教育支援計画の記入例12例|中学校編
中学校は、進路が視野に入ります。
本人の願い(2例)
- 自分に合った勉強のやり方を見つけたい
- 卒業したあとも通える場所を知っておきたい
保護者の願い(2例)
- 本人が自分で進路を選べるように、選択肢を一緒に見てほしい
- 困ったときに人に相談できる力をつけてほしい
長期目標(2例)
- 自分の苦手さを言葉で説明し、必要な配慮を自分から依頼できる
- 卒業後の生活を見通して、必要な手続きや相談先を把握している
学校での支援(2例)
- 定期テストの配慮(別室・時間延長)を本人と確認しながら実施する
- 進路見学に複数回参加し、見たことを本人の言葉で整理する時間をとる
関係機関との連携(2例)
- ○○地域障害者職業センター:3年次に職業評価を受ける予定
- ○○市障がい福祉課:卒業後のサービス利用について年2回相談する
進路について(2例)
- 高等特別支援学校、高等学校(通信制含む)の両方を見学したうえで判断する
- 卒業後の相談先として、○○相談支援事業所と本人・保護者で面談済み
小学校版と合わせて30例です。


「本人・保護者の願い」が埋まらないとき|事前の1枚と、直接聞くときの言葉
面談で「願いはありますか」と聞くと、答えは大抵こうなります。
「元気に過ごしてくれれば」
これは本音を隠しているのではありません。
急に聞かれても、言葉にならないだけです。
その場で考えて、その場で答える。
これは、かなり難しいことをお願いしています。
いちばんいいのは、面談の前に書いてもらうこと
面談の1〜2週間前に、簡単な用紙を渡しておきます。
これだけで、結果がまったく変わります。
用紙に入れる項目は、この3つで足ります。
- 中学校(小学校)を卒業するころ、どんなふうに過ごしていてほしいですか
- お家で、いちばん手がかかるのはどの場面ですか
- 学校にお願いしたいことはありますか
渡すときに、この一言を添えてください。
✔ 「うまく書けなくて大丈夫です。思いついたことだけで構いません」
これがないと、「ちゃんと書かないと」と身構えてしまいます。
空欄があっても、面談で一緒に埋めれば大丈夫です。
書いてきてもらえると、面談が変わります。
❌ その場で聞き出す時間
✔ 書いてくれたことを確認して、深める時間
面談そのものが短くなり、中身は濃くなります。
ただし、書くこと自体が負担な保護者もいます。
出てこなくても催促しません。
そういうときのために、次の聞き方があります。
それでも直接聞くときは
❌ 「将来の願いはありますか?」
✔ 「中学校を卒業するころ、どんなふうに過ごしていてほしいですか?」
時期を限定すると、想像しやすくなります。
もう一つ。
❌ 「困っていることはありますか?」
✔ 「お家で、いちばん手がかかるのはどの場面ですか?」
場面を聞くと、具体的な言葉が返ってきます。
本人にはこう聞きます。
✔ 「学校で、もうちょっとこうなったらいいなと思うことある?」
出てきた言葉は、直さずそのまま書いてください。
子どもの言葉で書かれた願いは、読む人に届きます。
引き継ぎで本当に使われるようにする、面談での一工夫
ここが今日いちばんお伝えしたいところです。
個別の教育支援計画は、多くの自治体で保護者に渡す書類として運用されています。
小学校から保護者へ。保護者から中学校へ。
これが一般的なルートです。
でも、私は何度か、
なくしてしまう
という場面に出会いました。
悪気はまったくありません。
引っ越し、進学準備、書類の山。
その中で、どこかへ行ってしまう。
書くことそのものが難しい保護者もいました。
そこで、面談のときにこう伝えるようにしました。
「もしよかったら、私の方から中学校へお渡ししておきますが、どうしますか?」



勝手に決めないのが、いちばん大事なところ
大事なのは、勝手にやらないことです。
- 中学校へ渡す中身は、面談の場で保護者に確認してもらう
- 同意の印も、その場でもらう
- 「渡さない」という選択も、もちろんある
渡す・渡さないを決めるのは保護者です。
学校は、選べる状態を用意するだけ。
この一手間で、届かなかった計画が届くようになりました。
そして面談の質も変わりました。
中身を一緒に見ながら話すので、「この欄、こういうことでしたよね」と確認できる。
保護者が、自分の子の計画を自分のものとして読んでくれるようになります。
ただし、ここでも先ほどの注意点が効いてきます。
引き継ぎの手順は、自治体や教育委員会によって決まっている場合があります。
- 学校間で直接引き継ぐことになっている自治体
- 保護者経由と定められている自治体
- 押印が必要な自治体、不要になった自治体
「担任の判断でやってよいこと」の範囲が、地域によって違います。
私のやり方をそのまま持ち込む前に、自校のルールと自治体の手引きを確認してください。
確認したうえで「できる」となったときに、初めて面談で提案する。
この順番なら、保護者にも管理職にも説明がつきます。
個別の教育支援計画の記入例のQA(担任向け)
個別の教育支援計画の記入例のまとめ
指導計画は「今学期どう教えるか」。
教育支援計画は「この子を誰とどう支えていくか」。
書く順番は、願い → 長期目標 → 学校の支援 → 関係機関 → 引き継ぎ。
様式と引き継ぎの手順は、自治体によって違います。
記入例は流用できますが、手順だけは自校のルールを確認してください。
そのうえで、書いたものが届くところまでが仕事です。
「もしよかったら、私の方からお渡ししておきますが、どうしますか?」
この一言から始めてみてください。












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