夜、子どもが寝たあとに「特別支援学級 入る基準」と検索する。
そんな時間を過ごしていませんか。
まだ誰にも相談していない。園の先生にも、実家にも言っていない。ただ、来年のことを考えると眠れない。
この記事では、小学校の特別支援学級に入るかどうかを考えるときに、親が見ておきたい5つのことをまとめます。
いつまでに決めればいいのかという日程も、途中でまとめています。
そして最後に、支援学級で学んだ子が、いま何をしているかの話を書きました。
将来のことがいちばん不安だと思うので、そこまで読んでいただけたら嬉しいです。
なお判定の基準については、地域によって違います。確実な方法を知りたい方は、お住まいの地域の教育委員会へご相談ください。
「基準」を調べても、答えが出ない理由

検索すると、こんな言葉が並びます。
- 知的障害の程度
- 自立や集団参加の様子
- 学習の習得状況
読んでも、うちの子がどこに当てはまるのか分からない。
そう感じたなら、それは当然です。
基準を読んでも、あなたの子の答えは出ないようにできているからです。
就学先は、チェックリストで機械的に決まるものではありません。
同じ検査結果の子が2人いても、違う場所を選ぶことがあります。
では何を見ればいいのか、5つに整理しました。
① 最後にあなたの希望が、いちばん重く扱われる

まずここを知っておいてください。多くの方が知らないままです。
就学先を決めるのは、市町村の教育委員会です。ただし2013年に制度が変わりました。
いまは、教育委員会が
- 障害の状態
- 必要な支援の内容
- 専門家の意見
- 学校や地域の状況
これらを総合的に見て判断しますが、そのときに本人と保護者の意見を最大限尊重することになっています。
さらに、文部科学省はこう書いています。
本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とした上で、最終的には市町村教育委員会が児童生徒の就学先を決定する
「合意形成を原則とする」。
ここが大事なところです。
一方的に決められて通知が届く、という仕組みではありません。
話し合って、納得したうえで決める。それが原則だと国が明記しています。
つまり、あなたの希望は「参考として聞いておきます」ではありません。
ぷーた先生私は22年間、特別支援学級で親子の関わってきました。その立場から言うと、就学先は教員が決めるものではない、というのが実感です。私たちにできるのは、判断の材料をお渡しすることだけなんです。
だから、迷っていることを正直に伝えて大丈夫です。
「決められません」と言っていいし、「まだ気持ちが追いついていません」と言っていい。
👉 就学相談で言っていい言葉
「まだ決めきれていないので、両方見てから考えたいです」
「家の事情もあって迷っています。相談させてください」
いつまでに決めればいいのか


「いつまでに答えを出さないといけないんだろう」
これも眠れなくなる原因の一つだと思います。日程は法令で決まっているので、逆算できます。
| 時期 | 何が起きるか |
|---|---|
| 10月31日まで | 市町村教育委員会が、来年入学する子の名簿を作ります |
| 11月30日まで | 就学時健康診断。多くの家庭で、ここから相談が動き出します |
| 年内〜1月 | 見学・面談・話し合い。ここが合意形成の期間です |
| 1月31日まで | 入学期日と、通う学校の通知が届きます |
特別支援学校を検討する場合は、12月31日までに市町村から都道府県に話がいき、1月31日までに保護者へ通知が届きます。
つまり、答えを出すのは秋から冬にかけてです。
いま夏なら、まだ見学に行く時間があります。焦って夏のうちに決める必要はありません。逆に、年が明けてから動き出すと選択肢が狭くなります。
秋の健康診断までに、一度どこかを見ておく。
これくらいの目安で十分です。


② IQや診断名だけでは決まらない


「IQがいくつだと支援学級ですか」
よく聞かれる質問です。数字ではっきりすれば楽なのに、と思う気持ちもよく分かります。
でも、数字だけでは決まりません。
同じ数値でも、こんなに違います。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 検査の数値 | 同じくらい | 同じくらい |
| 40人の教室 | 指示が通らず固まる | 友だちを見て動ける |
| 困ったとき | 何も言えない | 先生を呼びに行ける |
| 家に帰ると | 泣いて崩れる | けろっとしている |
数値が同じでも、その子が1日をどう過ごすかはまったく違います。
見られているのは数字ではなく、こちらです。
- 集団の中で、どのくらい安心して過ごせているか
- 困ったときに、助けを求められるか
- その日1日が終わったとき、その子が消耗しきっていないか
診断名も同じです。診断名は「その子の説明書」ではありません。
同じ診断でも、必要な支援はまったく違います。
③ 見学では「設備」ではなく「子どもの顔」を見る


学校見学に行くと、つい教室の広さや教材に目が行きます。
でも、見てほしいのはそこではありません。
いまその教室にいる子どもたちの顔を見てください。
- 手が空いたとき、子どもは何をしていますか
- 困っている子に、先生はどう声をかけていますか
- 泣いている子がいたとき、まわりの子はどうしていますか
- 子どもから先生に話しかけていますか
チェックリストにすると、こうなります。
✅ 子どもが先生に自分から話しかけている
✅ 「できた」場面に、先生が気づいて声をかけている
✅ 失敗したとき、責める空気がない
✅ 通常学級との行き来が、自然に行われている
- ❌ 教室がきれいに片づいている
- ❌ 教材がたくさんある
- ❌ 静かで落ち着いている
下の3つは、悪いことではありません。
ただ、あなたの子が安心できるかどうかとは関係がないというだけです。
静かすぎる教室が合う子もいれば、しんどい子もいます。
見るべきは設備ではなく、そこにいる子どもの表情です。


④ 家の事情を判断に入れていい


ここは、あまり書かれていないことです。
送迎、きょうだい、仕事。家庭の現実を判断に入れて構いません。
以前、こんな相談を受けました。
双子のごきょうだいでした。一人は障害が重く、支援学校が適していました。もう一人は、支援学級が合っていました。
お母さんが困っていたのは、送り迎えです。支援学校にはスクールバスがありますが、1年生のうちは両方の学校に送り迎えが必要になる。学校が2つに分かれると、毎日の生活が回らない。
お母さんはこうおっしゃいました。



本当は、二人とも同じ学校に通わせたいんです。
だから支援学級に揃えようか。それとも二人とも支援学校にしようか。そう悩んでおられました。
ここは、私では解決できませんでした


正直に書きます。私にはこの問題を解決できませんでした。
制度の側の問題だからです。学校が2つに分かれることも、1年生のうちは送迎が必要なことも、担任の私が変えられるものではありません。
そして、どちらを選ぶべきかを私が言うことでもないと思いました。決めるのはご家庭です。
私にできたのは、選択肢を増やすことだけでした。
放課後等デイサービスや家事代行のように、送迎を担ってくれるサービスがあることをお伝えしました。
「学校を諦めるか、生活を諦めるか」の二択に見えていたものが、もう少し選べる形になればと思ったからです。
もしいま、同じことで迷っているなら、覚えておいてください。
家庭の事情で選ぶことは、子どもを犠牲にすることではありません。
毎日の送り迎えで親が倒れてしまったら、その子の生活も一緒に壊れます。回る形を選ぶことは、その子のための判断です。
そして、その悩みは相談していいものです。
「そんな理由で決めるなんて」と思う必要はありません。
⑤ 卒業後の道は、一つではない


いちばん不安なのは、ここだと思います。
支援学級に入れたら、この子の将来はどうなるのか。働けるのか。
一人の子の話をさせてください。
ひらがなが最後まで難しかった子の話


私が出会ったのは、彼が6年生のときでした。担任をしたのは、その1年だけです。
ひらがなも、十分には書けませんでした。
でも、掃除がとても得意な子でした。背が高くて、黒板の上のほこりによく気がつく。頼まなくても、自分から拭いてくれるのです。
中学生になってからも、ときどき小学校に遊びに来てくれました。手紙も書いてくれました。
その手紙を読むと、拗音(「きゃ」「しゅ」)や促音(小さい「っ」)、濁音・半濁音が、正しくは使えていませんでした。漢字も難しかった。
学習面は、最後まで届きませんでした。
けれど、彼にはずっと変わらないものがありました。
情緒がとても安定していること。
気持ちがやさしくて、人の気持ちに寄り添えること。
彼は支援学校の高等部に進み、卒業しました。
いまは、清掃の会社で働いています。
毎日会社に出勤して、社員の方と一緒に車に乗って、ビルの掃除に向かう。仕事を終えて、また事務所に戻ってくる。そういう毎日を過ごしています。
この子から教わったこと


働けるかどうかを決めていたのは、学力ではありませんでした。
情緒が安定していること。人とうまくやれること。毎日決まった時間に、決まった場所に行けること。
そして何より、ご家庭がずっと温かい目で育てておられたことが大きかったと思います。
彼のあの穏やかさは、家庭で育ったものです。



もちろん、これは彼一人の話です。すべての子が同じ道を通るわけではありません。支援学級から通常学級に戻る子もいますし、高等部以外の進路を選ぶ子もいますよ。
制度としては、障害者雇用の枠を使って就職する道もあります。ただ、それはいま決めることではありません。
6歳の入学時点で、18歳の進路を決める必要はまったくないのです。
いま知っておいてほしいのは、これだけです。
道は、一つではない。
そして、いまの学力だけで決まるものでもない。


学校にお願いできること


見学や就学相談のときに、こう聞いてみてください。遠慮はいりません。
「いま在籍しているお子さんは、通常学級とどんなふうに行き来していますか」
交流の実態が分かります。学校によってかなり違う部分です。
「途中で学びの場を変えることは、実際にありますか」
これを聞いておくと、「一度入ったら戻れない」という不安がほどけます。制度としては変更できますし、実際に変わる子もいます。
「送り迎えのことで困っている家庭は、どうされていますか」
生活面の相談も、していい内容です。学校が知っている地域の資源を教えてもらえることがあります。


特別支援学級に入る基準のQA


- IQがいくつなら特別支援学級ですか?
-
数値だけで決まる仕組みではありません。同じ数値でも、集団の中での過ごし方や、その子の消耗の度合いによって判断は変わります。数値は材料の一つです。
- 一度入ったら、通常学級には戻れませんか?
-
戻れます。学びの場は途中で変更できます。ただし学校や自治体で手続きが違うので、見学のときに実際の事例を聞いておくと安心です。
- 診断を受けていませんが、相談できますか?
-
できます。診断がないと相談できない、ということはありません。まず教育委員会や就学予定の学校に問い合わせてみてください。
- 親の希望と、教育委員会の判断が違ったらどうなりますか?
-
本人と保護者の意見を最大限尊重し、合意形成を行うことが原則とされています。納得できないときは、その旨を伝えて話し合いを続けて構いません。一度で決めなければならないものではありません。
- きょうだいのことや送迎の都合で選ぶのは、よくないことですか?
-
よくないことではありません。毎日の生活が回らなければ、その子の生活も一緒に苦しくなります。送迎を支えるサービスもあるので、相談してみてください。
特別支援学級に入る基準のまとめ


- 基準を読んでも、あなたの子の答えは出ません
- 就学先は「合意形成を原則」として決まります。一方的に通知されるものではありません
- 通知が届くのは1月31日まで。答えを出すのは秋から冬です
- IQや診断名だけでは決まりません
- 見るのは設備ではなく、いまその教室にいる子どもの顔です
- 家の事情を判断に入れて構いません
- 卒業後の道は一つではなく、いまの学力だけで決まるものでもありません
決めるのは、あなたです。そして、まだ決められなくて大丈夫です。
それでも「うちの子の場合は」が残ったら


ここまで読んでも、たぶんまだ「うちの子の場合はどうなんだろう」が残っていると思います。
それは当然です。この記事に書いたのは一般的な見方で、あなたのお子さんのことは一文字も書いていないからです。
お子さんの様子を聞かせていただければ、22年間見てきた中でどう見えるかをお話しできます。60分、無料です。
記事の中でも書きましたが、決めるのはあなたです。私が就学先を決めることはしません。判断の材料をお渡しするだけです。
お子さんのことで、迷っていませんか。
記事を読んでも「うちの子の場合はどうなんだろう」が残ることがあります。それは当然で、記事に書けるのは一般的な見方までだからです。
お子さんの様子を聞かせていただければ、小学校の特別支援学級で22年間見てきた中で、どう見えるかをお話しできます。60分、無料です。
私が答えを決めることはしません。決めるのはあなたです。判断の材料をお渡しするだけです。








