「ねえ、聞いてる?」
一日に何回、言っているでしょう。
名前を呼んでも、返事がない。ゲームや動画に夢中で、こちらを見ない。
園や学校でも「お話を聞いていないことがあります」と言われる。
ぷーた先生「わざとなの?」「なんで、こんなに届かないの?」——そう思ってしまいますよね。
お伝えしたいことがあります。その子は、あなたを無視しているわけではありません。
「聞いていない」のではなく、“別の世界に入っている”だけのことが、とても多いんです。
この記事では、指示が通らない・話を聞いていない子への、家でできる5つの声かけと工夫をまとめます。
最後に、そのまま作れる「声かけカード」も紹介します。
まず、知っておきたい3つのこと


具体的な声かけに入る前に、土台になる3つのことをお伝えします。ここが分かると、あとの工夫が、ぐっとラクになります。
“聞ける”より先に、“戻ってこられる”を目指す
先に、ゴールの話をさせてください。いきなり「集中して、最後まで聞ける」を目指すと、遠すぎて、親子ともに疲れてしまいます。めざすのは、その手前。
- 呼ばれたら、いったん顔を上げられる
- 「今は宿題の時間だった」と、自分で気づける
- 何度も同じことを言われずにすむ
“戻ってこられる”回数が増えれば、それでじゅうぶん前進です。
「聞いていない」の正体は、“切り替えられない”


何度言っても届かないとき、たいてい起きているのはこれです。
❌ 大声で、もう一度言う
❌ 用件を一気に並べる
❌ 「何回言えばわかるの!」で終わる
子どもは、動画・ゲーム・空想など、強く向いている世界から、注意を切り替えるのが苦手なことがあります。聞こえていないのではなく、戻ってこられない。だから、声を大きくしても、なかなか届かないんです。
届かない理由は、1つじゃない


ここは大事なので、先に整理させてください。
- 強く向いた注意を、切り替えるのが苦手
- 一度にたくさん言われると、処理しきれない
- 声(音)は流れて消える。あとに残らない
- 好きな世界(動画・ゲーム・空想)の引力が強い
どれか1つに決めなくて大丈夫。重なっていることもよくあります。そして、これはやる気がない・反抗している、ではありません。“戻り方”を、まだ知らないだけなんです。
指示が通らないときに届く声かけと工夫5つ


ここから具体的に。相談の現場で実際に使っている順番でお伝えします。
ステップ1|名前を呼んで、“こっち”を向いてから言う
いちばん多いのが、別のことをしている最中に、うしろから用件を言ってしまうこと。これだと、ほぼ届きません。
「〇〇くん」→(目が合う・手が止まる)→ それから伝える
名前を呼んで、いったん注意がこちらに向いてから話す。この“ひと呼吸”があるだけで、届き方がまるで変わります。
ステップ2|「今、どこにいる?」で世界から連れ戻す
自分の世界に入っている子には、いきなり指示を出しても入りません。まず、今いる場所に戻してあげます。
「今、何してる?」「今、どこにいる?」
「そう、おうちだね。じゃあ、次はこれだよ」
責める口調ではなく、現実に戻す“案内”のつもりで。ふわっと戻してから伝えると、すっと入りやすくなります。
ステップ3|一度に1つ。短く、順番に
「歯みがきして、着替えて、ランドセル持って」——まとめて言うと、たいてい最初の1つで止まります。
❌ 「あれとこれとそれ、やっといて」
✔ 「まず、歯みがき」→ 終わったら「次、着替え」
1つ終わってから、次。急がば回れで、結局こっちのほうが早く進みます。
ステップ4|口で言わず、“見せる”|カードの作り方
声は、その場で消えてしまいます。でも、書いた文字は残ります。だから、口で何度も言う代わりに、“見せる”に切り替えます。
- ホワイトボードに、その日の予定を書いておく
- 次にやることを、短い言葉で書いて貼っておく
- 「今、何する時間?」と書いたカードを、そっと指さす
カードは、厚めの紙(画用紙)を、しおりくらいの縦長に切って作ります。注意がそれたら、言葉で言わずに、そのカードを見せて、指さすだけ。
- 声を荒げなくてすむ
- きょうだいや、まわりの子に聞かれない
- 何度も注意されるより、本人の自尊心も守れる
書いて貼っておくと、自分で時計を見て動き出す子も多いんです。
ステップ5|できた瞬間に、「できたね」を先に渡す
できていないことは目につきます。でも、できた瞬間は、意外と見逃しがちです。
「今、自分で気づけたね」
「今、すぐ動けたね」
できた時に、すかさず言葉にする。叱るより、この一言のほうが、次の行動につながります。これが積み重なると、声かけの回数が、自然に減っていきます。
ここで、私は一度失敗しました


以前、支援学級で担任していたときの話です。正直にお話しします。
昔の私は、届かないと“もっと言えばいい”と思っていました。声を大きく、回数を増やして。
でも、増えたのは、私のイライラだけ。子どもは、ますます耳を閉じてしまいました。
声を足すのではなく、“見せる”に変える。この一手で、驚くほどラクになりました。
家庭だけでがんばらない|学校にお願いできること


口頭の指示に、“見える形”を1つ添えてもらう。それだけで、学校でもぐっと届きやすくなります。
担任の先生への、そのまま使える一言です。
「口で言うだけだと入りにくいようです。黒板やカードなど“見える形”を1つ添えていただけると助かります。家でも同じカードを使っています」
「うちの子だけ、すみません」ではなく、「こうすると届きます」と伝える。
その子の“取扱説明書”を、家と学校でいっしょに作っていく感覚でいいんです。
指示が通らない・話を聞かないときのQ&A


- 何度言っても聞きません。耳が悪いのでしょうか?
-
一度、聴力を確認して安心しておくのは大切です。そのうえで、聞こえの問題ではなく、注意の切り替えが理由のこともあります。気になるときは耳鼻科や専門機関で確認してみてください。まず「今どこにいる?」で戻してから伝えると届きやすくなります。心配が続くなら専門家に相談を。
- わざと無視しているように見えます。
-
そう見えても、多くは「戻ってこられない」だけです。「わざとでしょ」と責めると、“呼びかけ=叱られる”と感じて、余計に反応しなくなります。まずは、戻す声かけから試してみてください。
- カードや時間割は、何歳から使えますか?
-
文字が少し読めれば使えます。年齢よりも「その子に分かる形か」が大事です。まだ文字が難しければ、写真やイラストを添えても構いませんが、まずは短い言葉で書いたカードから試してみてください。
- 薬をすすめられました。飲ませたほうがいいですか?
-
あわてて決めなくて大丈夫です。声かけや環境の工夫で変わることもありますし、判断の材料は主治医と一緒にそろえていけます。ただ、判断材料として、医療機関で定期的にみてもらうことには意味があります。薬の話は、別の記事でくわしく触れます。
指示が通らない・話を聞かないときのまとめ


- 「聞いていない」の多くは、“戻ってこられない”だけ
- まず「今どこにいる?」で、現実に戻す
- 用件は1つずつ・短く。声より「見せる」
- 「今、何する時間?」カードで、指さして伝える
本人が、自分で気づけるように。声を足すより、見える形に変える。それだけで、親子ともに、ぐっとラクになります。
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