「個人情報を入れてはいけないのは分かる。でも、それ以外の『やってはいけないこと』があいまいで、こわい」
先日、私のコミュニティの先生から、こんな質問をいただきました。
教科書は入れていいの?
論文や所見はどこまで手伝ってもらえるの?
調べたけれど、はっきり書いてあるところが見つからない。
この記事では、文部科学省・文化庁・海外の教育機関の公式資料を根拠に、学校でAIにやらせてはいけないこと5つと、逆に「ここまでは堂々と使っていい」という線引きを整理しました。
迷いやすい「教科書を入れていいのか」問題も、1章使って説明します。
最後まで読めば、明日から不安なくAIを使えるようになります。
「何がダメか分からない」から、全力で使えない

AIを使い始めた先生ほど、こんな不安を持っています。
・知らないうちにルール違反をしていたらどうしよう
・「AIに書かせるなんてズル」と思われないかな
・教科書の内容を入れるのはセーフ?アウト?
・研究のまとめや所見は、どこまで頼っていいの?
まじめな先生ほど、ここで止まります。
見えないルールブックがこわくて、アクセルを踏めない。
でも安心してください。
ルールは「入れるもの」と「出すもの」の2方向で考えると、すっきり整理できます。
先にお伝えしたいこと|国は「使うな」とは言っていない

あいまいさの正体は、ルールが1か所にまとまっていないことです。
個人情報・著作権・研究倫理・自治体ルールと、根拠がバラバラの場所にあります。
ただ、それらを全部読むと、方向性は驚くほど一致しています。
文部科学省のガイドライン(Ver.2.0)は、校務について、生成内容の適切性を先生が判断できる範囲なら、積極的な活用は有用だとしています。禁止ではなく、条件つきの推奨です。
海外も同じ方向です。
| 機関 | スタンス |
|---|---|
| 文部科学省(日本) | 人間中心の利活用。校務は適切性を判断できる範囲で積極活用は有用 |
| UNESCO | 人間中心アプローチ。プライバシー保護と、子どもの単独利用への年齢制限を提言 |
| 英国教育省 | 先生が「教えること」に集中できるよう、事務負担の削減に活用 |
| 米国教育省 | 「humans in the loop」=人間が常に最終判断に関わることを原則に |
共通点は3つ。
最終判断は人間がする・個人情報を守る・子どもの利用は大人より慎重に。
つまり、先生が校務で使うことは、世界的にはむしろ後押しされています。
問題は「使うかどうか」ではなく、「何を入れて、何を出すか」です。
ぷーた先生「こっそり使う」から「線引きを知って堂々と使う」へ。この記事はそのための地図です
学校でAIにやらせてはいけないこと5つ


結論から。避けるべきは、この5つです。
- ① 個人情報を入れる:子どもの名前・診断名・家庭の事情など。実態は「小2・ひらがなが読みやすい子」のように言葉にして伝える
- ② 他人の著作物を丸ごと入れる・似たものを配る:市販教材や教科書のページごとの入力、既存キャラクターそっくりの生成物の配布
- ③ AIの成果物を「そのまま自分の名前で」出す:研究論文・所見・公的文書の丸投げ提出。下書きや構成案の手伝いはOK、最後は自分の言葉と責任で
- ④ 所属のルールを確認せずに使う:自治体・学校でAIの運用ルールは違う。使い始める前に管理職へ一言
- ⑤ AIの答えを、確認せずにそのまま使う:AIは事実を間違えることがある。教材も文章も、子どもに出す前に先生の目で確かめる
逆に言えば、この5つを外さなければ、
調べる・整理する・下書きを作る・言い換える・アイデアを出す——
こうした使い方は、堂々とやっていい範囲です。
確認のときは、この言葉がそのまま使えます。
「校務でAIを使う場合のルールはありますか?」
管理職や教育委員会にこう聞くだけで、④はクリアできます。
教科書をAIに入れていいの?


いちばん質問が多いのが、これです。
教科書は著作物です。
そして、AIへの入力がどこまで許されるかは、正直に言うと、まだグレーな部分が残っています。
文化庁の「AIと著作権」の考え方では、情報解析のための入力は原則として適法とされる一方、生成されたものが元の著作物とそっくりなら、その利用は侵害になり得ます。また、多くのAIは入力内容がサーバーに送られ、学習に使われる可能性もあります。
私は法律の専門家ではないので、「ここまでは絶対に大丈夫」と断定はしません。
その上で、現場の安全ラインとしておすすめしているのは、こうです。
❌ 教科書のページを撮影・コピペして、AIに入れる
✔ 「小2算数の『くり下がりのある引き算』の単元で、◯◯が苦手な子向けの練習問題を」と、単元名・ねらい・レベルを言葉で伝える
紙面を入れるのではなく、要素を言葉にして伝える。
これなら著作権の心配がほぼなく、実は、その子に合わせた調整もしやすくなります。
単元の「ねらい」を言葉にできるのは、教材研究をしてきた先生だけです。
ここでも、先生の専門性が主役になります。
なお、教科書会社のAI利用への方針は、会社ごとに違います。条件つきで認めている社もあります。実際に教科書会社へ同じ質問を送って回答を比較した先生の調査でも、対応はまさに三社三様でした(参考:川合智宏さんの比較調査)。お使いの教科書の発行会社の方針を確認すると、より安心して使えます。



「入れられないから不便」ではなく、「言葉にしたほうがいい教材になる」が実感です
論文・所見・研究のまとめは、どこまでOK?


「研究論文を書かせるのはダメですよね?」という質問もよくあります。
線引きは、③と同じです。
手伝わせるのはOK。丸投げして自分の名前で出すのはNG。
- 先行研究や資料を調べて整理してもらう(出典は自分で確認)
- 構成案・アウトラインを出してもらう
- 自分が書いた文章を、読みやすく言い換えてもらう
ここまでは、世界の機関が示す「humans in the loop(人間が判断の輪の中にいる)」の範囲です。
注意点は2つ。
AIは事実を間違えることがあるので、引用と出典は必ず自分で確認する。
そして、投稿先の学会・研究会・教育委員会がAI利用のルールを定めている場合は、そちらに従う。
所見や通知表も同じ考え方です。
子どもの様子を知っているのは先生だけ。AIが出せるのは言い回しの候補までで、その子の評価を決めるのは、最後まで先生の仕事です。
学校のAI利用ルールのQA(担任向け)


- 子どもの作文や日記を、添削のためにAIに入れてもいい?
-
名前を消しても、内容から個人が特定できる場合はやめておきましょう。家庭の事情や固有のエピソードが入っている文章は、個人情報と同じ扱いが安全です。添削の観点だけをAIに聞いて、実際の文章は先生が見る形をおすすめします。
- 市販のワークやドリルを参考にさせるのは?
-
ページごと入力するのは避けてください。教科書と同じで、「くり上がりの計算・10問・イラストなし」のように形式を言葉で伝えれば、著作権の心配なく似た形式の問題が作れます。
- 学校にAIのルールがまだない場合は?
-
「ルールがない=自由」ではなく、「ルールがない=確認してから」が安全です。文部科学省のガイドラインを添えて「校務でこう使いたいのですが」と管理職に相談すると、前向きに進みやすくなります。自治体によって運用が違うので、この確認だけは省略しないでください。
- 無料のAIと有料のAI、安全面で違いはある?
-
有料プランや学校向けプランには、入力内容をAIの学習に使わせない設定があるものが多いです。無料版でも設定でオフにできるサービスがあります。どちらの場合も「個人情報を入れない」が大前提なのは変わりません。
まとめ|線引きを知れば、堂々と使える


やってはいけないことは、5つだけ。
個人情報を入れない。
著作物を丸ごと入れない。
成果物を丸投げで出さない。
所属のルールを確認する。
AIの答えは、自分の目で確かめる。
この5つを守れば、残りは堂々と使っていい範囲です。
浮いた時間を、子どもの顔を見る時間に。
出典:文部科学省「学校現場における生成AIの利用について」/文化庁「AIと著作権」/UNESCO「Guidance for generative AI in education and research」/英国教育省「Generative AI in education」











