「ねえねえ! ねえ、聞いて!」
電話に出たとたん、子どもが話しかけてくる。
誰かと立ち話をしていると、横から割り込んでくる。
そんな毎日に、疲れていませんか?
この記事では、子どもが待てずに話しかけてくる理由と、家でできる5つの工夫をまとめます。
記事の中には、そのまま使える声かけの例とソーシャルストーリーの例、担任の先生への伝え方の例文も載せています。
電話中に話しかけてくるのには、理由があります

忙しい毎日の中で、電話や大人同士の会話は避けられません。
でも、そんな時に限って、子どもが話しかけてきます。
- 仕事の電話中に「ねえ! ねえ!」と呼び続ける
- 先生や知り合いと立ち話をしていると、腕を引っぱる
- 「待っててね」と言っても、10秒もたたずにまた話しかける
電話の相手に「すみません」と謝りながら、
「どうしてうちの子は待てないんだろう」と落ちこんでしまう。
同じことで悩んでいるのは、あなただけではありません。
待つための「やり方」が分かると、子どもは少しずつ待てるようになっていくことが多いです。
たとえば、こんな姿です。
- 電話中、子どもが自分でノートに書いて待っている
- 電話が終わったら、「待っててくれてありがとう」から会話が始まる
- 「今は待つ時」と、子どもが自分で気づける
そんな姿は、特別なことではありません。
まずは、今うまくいっていない理由から整理します。
「待っててね」が伝わりにくい理由
多くの保護者が、「待っててね」「あとでね」と声をかけています。
でも実は、この言葉は、子どもにとってとても分かりにくいんです。
言葉は、言ったそばから消えてしまいます。
目に見えないものを覚えておくのは、子どもにとって難しいことなのです。
待てない理由は、1つではありません
「私の育て方が悪いのかな」
そう思ってしまう方も、多いのではないでしょうか。
でも、待てるかどうかは、育て方だけで決まるものではありません。理由はいくつかあります。
理由を知っておくと、工夫を選びやすくなります。
- 終わりが見えないと不安になる
「いつまで?」が分からないと、待つことがとてもつらくなります。 - 待っている間にすることがない
何もせずにじっと待つのは、大人でも難しいことです。 - 今言わないと忘れてしまう
言いたい気持ちが大きく、「今言わないと消えちゃう」と感じています。
「あとで本当に聞いてもらえるのかな」という心配もあります。 - おうちの人のことが気になってしかたない
「自分以外の人と話しているのがいや」という気持ちが隠れていることもあります。
いくつかが重なっていることもよくあります。
どれか1つに決めなくてもかまいません。
大切なのは、「わがまま」ではなく「困っている」と見ることです。
電話中でも待てるようになる5つの工夫と声かけ例

ここからは、家でできる具体的な方法を紹介します。
できそうなものから、1つ試してみてください。
工夫1|赤・黄・青のカードで「話しかけていい時」を見せる
言葉の「待っててね」は、すぐに消えてしまいます。
「今は静かに」「あとでね」と紙に書いて見せても、子どもには一目では分かりにくいものです。
だから、一目で分かる合図を使います。
たとえば、信号と同じ赤・黄・青の3色のカードです。
信号にたとえると、子どもにも分かりやすくなります。
- 赤:今は話しかけない(電話中など)
- 黄:もうすぐ終わるよ(たとえば「あと3分」)。もう少し待ってね
- 青:話しかけてOK

電話に出る前や、出てすぐに、赤のカードを見せます。もうすぐ終わる時(たとえば、あと3分くらい)は黄色に、電話が終わったら青に変えます。
電話のほかに、家のことをしている時や立ち話の時にも、同じカードが使えます。
もう1つ大切なのが、「終わりの時間」を決めておくことです。
こちらから電話をかける時は、「2時まで」「3時まで」のように、終わりの目安を先に伝えておきます。
終わりが分かっていると、子どもも静かに待ちやすくなります。
❌「待っててね」
✅ 赤のカードを見せて「2時まで電話するね。終わったら聞くね」
時計を読むのがまだ難しい子には、砂時計やタイマーで終わりを見せると伝わりやすくなります。
残り時間が色で減っていく、無料のWebタイマーも用意しています。スマホやタブレットでそのまま使えます。
残り時間の色は、カードの赤・黄・青とまざらないように、むらさきやみどりがおすすめです。

工夫2|今伝えたいけど伝えられない時の「伝言ノート」

「今伝えたいけど、伝えられない時は、この伝言ノートに書く」
というルールを作ります。
電話の途中で話しかけてきたら、声は出さずに、ノートを渡して赤のカードを指さします。
ここがポイントです。
言葉で返事をすると、そこから会話が始まってしまいます。
ノートを渡すこと自体が、「今は待つ時」の合図になります。
そのかわり、電話のあとは必ず聞きます。
「無視された」ではなく「あとでちゃんと聞いてもらえる」と分かれば、待ちやすくなります。
書くのが難しい子は、絵や丸だけでもOK。
声を録音する方法もありますが、電話中は相手に聞こえてしまうので、家のことをしている時など、電話以外の場面で使います。
ノートに書くことが、待っている間の「すること」にもなります。
話したいことや見つけたことを、ためておく場所にもなります。
電話のあとに、おうちの人がひと言返事を書けば、交換ノートになります。
工夫3|ルールは子どもの言葉で言ってもらう

ルールを伝えたら、「分かった?」で終わらせません。
「電話している時は、どうするんだっけ?」
と聞いて、子ども自身の言葉で言ってもらいます。
自分の口で言えると、少しずつ身につきやすくなります。
工夫4|次の日も、電話の前にもう一度確かめる
その日に言えても、次の日には抜けていることがあります。
電話をかける前に、もう一度確認します。
「今から2時まで電話するね。どうするんだっけ?」
かかってきた電話の時は、出る前に工夫1のカードを見せるだけでもかまいません。
工夫5|ソーシャルストーリーで「理由」と「気持ち」を伝える

ルールと一緒に、なぜ今は話せないのかを、子どもに分かる言葉で伝えます。
とくに「自分以外の人と話しているのがいや」という気持ちがある子には、この理由を伝えることが安心につながりやすくなります。
ソーシャルストーリーとは、場面や理由を短いお話にして伝える方法です。
電話が鳴ってからではなく、落ち着いているふだんのうちに、一緒に読んでおきます。
お話を漫画にすると、子どもにはもっと分かりやすくなることが多いです。
そのまま使える例です。
おうちの ひとは ときどき でんわを します。
でんわは、おしごとや だいじな ようじの ためです。
でんわを している あいだ、ぼくは ソファで まって います。
あかい カードの ときは、しずかに まちます。
きいろい カードは、もうすぐ おわる あいずです(たとえば、あと 3ぷん)。まだ しずかに まちます。
あおい カードに なったら、はなしかけて いいです。
いいたい ことが あったら、でんごん ノートに かきます。
けがを した ときや、ぐあいが わるい とき、あぶない ときは、すぐに いって いいです。
でんわが おわったら、おうちの ひとは「まってて くれて ありがとう」と いって、ノートを いっしょに みて くれます。
おうちの ひとは、ぼくの ことが だいすきです。
※「おうちの ひと」は、ママ・パパ・おばあちゃんなど、お子さんがふだん呼んでいる呼び方に変えて使えます。「ぼく」は「わたし」や名前に、待つ場所(ソファ)はご家庭に合わせて変えてみてください。
最後の一文が大切です。
「待っている間も、自分のことを大事に思ってくれている」という安心が、待つ力を育てます。
電話が終わったら、この一言を

電話が終わったら、子どもが来る前に、あなたから声をかけてみてください。
「待っててくれてありがとう。何だった?」
待てた時は、電話が終わったらすぐに、何ができたかを言葉にしてほめます。
たとえば、こんな言葉です。
- 「おうちの人が誰かと話しているのに、待てたね」
- 「電話のときは静かにする、赤のカードを見てたね」
「ありがとう」に一言足すだけで、何がよかったのかが子どもに伝わります。
そして、ノートを一緒に見ます。
「待てば、ちゃんと聞いてもらえる」。
この経験を積み重ねていくことが、いちばんの近道です。
ここでつまずきやすい|「分かった」は、まだ分かっていないことも
ルールを伝えた時、子どもは「分かった!」と言います。
でも、その「分かった」は、まだ本当には分かっていないことがよくあります。
そして、いざ電話が鳴ると、いつものように話しかけてしまう。
すると大人は「言ったのに、なんで?」とイライラしてしまいます。
ルールは、伝えただけでは身につきにくいものです。
だから、工夫3の「子どもの言葉で言ってもらう」と、工夫4の「次の日も確かめる」を、できるようになるまでくり返します。
時間はかかりますが、ここをていねいにやると、あとが楽になりやすいです。
「何度言っても伝わらない」と感じる時の声かけは、こちらの記事でもまとめています。

続けるコツと、担任の先生への伝え方の例文

ここからは、続けていく時の考え方と、学校へのお願いのしかたです。
できるところから1つずつ
毎日、本当に忙しいと思います。
仕事もある。家のこともある。自分のやりたいこともある。
だから、「待てない」への対応は、つい後回しになってしまう。
それも無理のないことです。
わが子のことでも、疲れたり、イライラしたりするのは当たり前です。
先生でも、誰でも、人には感情があります。
つい強く叱ってしまう日もあると思います。
ただ、強く叱って子どもが止まっても、多くは、おうちの人の表情を見て止まっただけです。
何をすればいいかが分かって止まっているわけではありません。
だから、イライラしないことを目指すより、手立てを増やして、子どもが分かるやり方で伝えていきましょう。
手立てが増えると、おうちの人も子どもも、心おだやかに過ごしやすくなります。
22年間、特別支援学級の親子と関わってきて、感じていることがあります。
困りごとに、近くの大人が子どもと一緒に向き合っておくと、その先が楽になることが多い、ということです。
今いちばん気になる1つから始めてみてください。
「電話中はノート、電話のあとは必ず聞く」。この習慣ができるだけでも、子どもの様子は少しずつ変わっていくことが多いです。
先生には、こう伝えてみてください
家庭だけでがんばる必要はありません。
学校でも似た場面があれば、先生にも同じやり方で関わってもらえると、子どもにとって分かりやすくなります。
たとえば、こんな伝え方です。
「家で、話しかけていい時を色のカードで見せて、話したいことがある時は『伝言ノート』に書くようにしています。学校でも、先生がほかの方と話している時などに、同じように使っていただくことはできますか?」
家と学校で合図やルールがそろうと、子どもは迷いにくくなります。
電話中に話しかけてくる子どもへのQ&A

- ノートを渡しても、書かずに話し続けます。
-
最初は、よくあることです。電話が終わったら「ノートに書いてくれると、うれしいな」と伝え、落ち着いている時にもう一度ルールを確認しましょう。電話をかけるまねをして練習するのもおすすめです。
- 字がまだ書けません。
-
絵や丸だけでもOKです。電話以外の場面なら、タブレットや使っていないスマホで声を録音する方法もあります。大切なのは「今は待って、あとで伝える」という流れです。
- どのくらいでできるようになりますか?
-
お子さんによってちがいます。すぐできる子も、時間がかかる子もいます。できた日を見つけて、「できたね」と伝えていきます。
- 急ぎの時も待たせるのですか?
-
赤のカードが出ていても、ケガをした、具合が悪い、危ないことがある時は「すぐ言っていい」と、前もって決めておきましょう。それ以外は「待つ」。この線引きを、絵や言葉で確認しておくと安心です。
電話中に話しかけてくる子どもへの関わり方のまとめ

「待っててね」だけでは、子どもには伝わりにくいものです。
- 赤・黄・青のカードで「話しかけていい時」を見せ、終わりの時間を決める
- 「伝言ノート」を用意する
- ルールは子どもの言葉で言ってもらう
- 次の日も、電話の前にもう一度確かめる
- ソーシャルストーリーで「理由」と「気持ち」を伝える
待てた時は、電話が終わったらすぐ「待っててくれてありがとう」と伝え、何ができたかを言葉にしてほめます。
その一言が、次も待ってみようと思える力になります。
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