特別支援学級を担任していると、
- 「教科書が全然進まない」
- 「このままでは年間指導計画どおりに終わらない」
- 「他の学級はもう次の単元に進んでいるのに…」
と不安になることがあります。
特に、知的障害のある子どもたちの学級では、同じ学年であっても、学習の理解度や生活経験、集中できる時間、文字を書く力、話を聞く力に大きな差があります。
そのため、通常学級と同じペースで教科書を進めようとすると、先生も子どもも苦しくなってしまうことがあります。
この記事では、特別支援学級で教科書が進まないときに、担任がどのように考えたらよいのかをお伝えします。
特別支援学級で教科書が進まないのは、よくある悩み

特別支援学級では、学年の教科書を使っていても、子どもの実態によっては内容が難しすぎることがあります。
たとえば、3年生の教科書を使っていても、文字の読み書きは1年生の内容から丁寧に取り組む必要がある子もいます。
4年生の教科書に入っていても、計算はできるけれど、長さやかさ、グラフになると急に難しくなる子もいます。
- 「計算はできる」
- 「でも文章題は苦手」
- 「筆算は好き」
- 「でも長さの単位はわからない」
- 「音読はできる」
- 「でも内容理解は難しい」
このように、子どもの力は一つではありません。
教科書のページだけを見ると「進んでいない」と感じますが、子どもの中では、少しずつできることが増えている場合もあります。
特別支援学級は「教科書を終わらせること」だけが目的ではない

もちろん、教科書を使って学習することは大切です。
でも、特別支援学級で一番大切なのは、教科書を最後まで終わらせることではありません。
- その子が、今より少しわかるようになること。
- 今より少し自分でできるようになること。
- 学習に向かう気持ちをなくさないこと。
こちらの方が大切です。
教科書を無理に進めても、子どもが「わからない」「できない」「もう嫌だ」と感じ続けてしまうと、
学習そのものが苦手になってしまいます。
特別支援学級では、教科書を使いながらも、子どもの実態に合わせて内容や量を調整していくことが必要です。
「全部理解してから次へ進む」は理想だけれど、現実には難しい

本当は、一つの単元をしっかり理解してから次に進めたら理想です。
でも、学校には年間の流れがあります。
- 行事もあります。
- 交流学級との兼ね合いもあります。
- 他学年の子どもたちを同時に見る時間もあります。
- 一人にだけ長く時間をかけ続けることが難しい場面もあります。
だからこそ、特別支援学級では、
- 「ここは丁寧にやる」
- 「ここは触れる程度にする」
- 「ここは生活の中で扱う」
- 「ここは今は深追いしない」
という判断が必要になります。
全部を同じ重さで扱おうとすると、先生も子どもも疲れてしまいます。

得意なことと苦手なことを分けて見る

子どもを見るときに大切なのは、「できる」「できない」で大きく分けすぎないことです。
- 計算は得意だけれど、文章題は苦手。
- 筆算はできるけれど、位がずれる。
- 音読はできるけれど、内容を説明するのは難しい。
- ひらがなは読めるけれど、書くのは苦手。
- 図形は好きだけれど、単位の変換は難しい。
このように、同じ教科の中にも得意と苦手があります。「算数ができない」「国語が苦手」と大きく見るよりも、
- 「計算はできる」
- 「長さは難しい」
- 「文章を読むより、絵や具体物があるとわかりやすい」
というように細かく見ると、支援の方法が見えてきます。
先生が子どもの得意と苦手を分けて見られるようになると、教科書が進まないことへの不安も少し減ります。
苦手な単元は「1問だけ一緒にやる」でもよい

たとえば、算数で10問の練習問題があったとします。
でも、その子にとって単元そのものが難しい場合、10問すべてやらせようとすると、途中で気持ちが切れてしまうことがあります。
そのようなときは、1問だけ一緒にやってみる。
- 先生と一緒に考える。
- 数字を指さす。
- 図に印をつける。
- 答えを選ぶ。
- 書くところだけ手伝う。
それでも立派な学習です。「全部やらなかったからダメ」ではありません。
- その子が、その単元に少しでも触れた。
- 先生と一緒に考えた。
- 前より少しわかった。
- 嫌にならずに終われた。
これも大事な成果です。
特別支援学級では、量を減らすことは手抜きではありません。
子どもが学習に参加できる量に調整することは、大切な支援です。
下の学年の内容に戻ってもよい

特別支援学級では、今の学年の教科書が難しい場合、下の学年の内容に戻ることもあります。
これは、後退ではありません。その子に必要な土台を作るためです。
- ひらがなやカタカナがまだ不安定な子には、文字の読み書きから丁寧に。
- 数のまとまりがわかりにくい子には、具体物を使って数えるところから。
- 文章を読むのが難しい子には、短い文や絵を使って理解するところから。
下の学年の内容に戻ることは、恥ずかしいことではありません。
その子がわかるところから始めることが、結果的に一番の近道になることがあります。
生活で使う学習を優先する

特別支援学級で学習内容を考えるときは、「この子が生活の中で使う可能性が高いか」という視点も大切です。
たとえば、算数なら、
- お金
- 時計
- 長さ
- 重さ
- かさ
- 数の大小
- 簡単なたし算、ひき算
- 買い物
- カレンダー
などは、生活につながりやすい内容です。
もちろん、学年の内容をまんべんなく扱うことも大切です。でも、子どもの実態によっては、すべてを同じ深さで理解するのが難しいこともあります。
その場合は、将来の生活に使いやすい内容を優先して丁寧に扱うとよいです。教科書の順番どおりではなくても、その子の生活に必要な学びを積み重ねることが大切です。
教科書を進めるより、学習に向かう気持ちを守ることも大切

特別支援学級では、学習内容だけでなく、学習に向かう気持ちも大切です。たとえば、プリントを10枚できることよりも、
- 「今日は3つなら頑張れる」
- 「終わったら好きな絵を描ける」
- 「先生と一緒ならやってみようと思える」
という状態を作ることの方が大切な場合があります。
以前は暴言や拒否が多かった子が、少しずつ落ち着いて課題に向かえるようになることもあります。これは、教科書のページ数では見えにくい成長です。でも、特別支援学級ではとても大きな成長です。
学習は、安心できる関係の上に積み上がります。
- 「この先生となら大丈夫」
- 「少しならできそう」
- 「終わったら安心できる活動がある」
そう思えることが、次の学習につながります。
保護者には「できること・苦手なこと・今後の方針」で伝える

教科書が進まないとき、担任が不安になる理由の一つに、保護者への説明があります。
- 「このままで大丈夫ですか?」
- 「学年の内容はどこまでできていますか?」
- 「将来の進路に間に合いますか?」
と聞かれることもあります。そのときに大切なのは、できないことだけを伝えないことです。
保護者には、
- 今できていること
- 苦手なこと
- 学校でどのように進めていくか
この3つで伝えるとよいです。
たとえば、「計算は意欲的に取り組めています。一方で、長さやかさなどの単位が出てくると難しさがあります。
今後は、教科書の内容に触れながら、生活の中で使う場面も取り入れて学習していきます。」
このように伝えると、保護者も子どもの状態を理解しやすくなります。
「できません」だけではなく、「ここはできます」「ここは難しいです」「だから、こう進めます」と伝えることが大切です。

先生が一人で抱え込まない

教科書が進まないと、担任は自分を責めてしまうことがあります。
- 「私の教え方が悪いのかな」
- 「もっと教材を作らなきゃ」
- 「他の先生なら進められるのかな」
と思うこともあるかもしれません。でも、特別支援学級の学習は、簡単ではありません。
- 学年も違う。
- 実態も違う。
- 教科も違う。
- 生活面の支援もある。
- 保護者対応もある。
- 交流学級との調整もある。
その中で、一人一人に合わせて学習を組み立てるのは、とても大変な仕事です。
だからこそ、全部を一人で抱え込まなくて大丈夫です。管理職や特別支援教育コーディネーター、学年の先生、保護者とも共有しながら進めていくことが大切です。

特別支援学級で教科書が進まないとき|全部終わらせなくても大丈夫な理由のQA

特別支援学級で教科書が進まないとき|全部終わらせなくても大丈夫な理由のまとめ

特別支援学級で教科書が進まないと、不安になります。でも、教科書のページが進むことだけが、学びではありません。
- 昨日より少し落ち着いて取り組めた。
- 先生と一緒に1問考えられた。
- 苦手な単元に少し触れられた。
- 自分から鉛筆を持てた。
- 「やってみる」と言えた。
- 終わった後に安心して過ごせた。
これらも、子どもにとって大切な学びです。
特別支援学級では、全部を終わらせることよりも、その子に合った学びを積み重ねることが大切です。
教科書が進まないときほど、
- 「この子は今、何がわかっているかな」
- 「どこなら少し頑張れるかな」
- 「生活につながる学びは何かな」
と見直してみてください。
先生が焦りすぎず、子どもの今に合わせて進めていくこと。
それが、特別支援学級の学習ではとても大切です。





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