― 特別支援学級担任が「明日から組み立てられる」実践ガイド ―
生活単元学習について、考え方や大切さは分かってきたものの、
「実際の授業は、どう組み立てればいいのか分からない」
「活動で終わってしまい、学習になっているか不安」
と感じている先生も多いのではないでしょうか。
生活単元学習は、特別な授業方法が必要なわけではありません。
基本となる“型”を押さえ、具体的なイメージをもてば、
どの単元も無理なく組み立てることができます。
この記事では、
生活単元学習の授業づくりの基本構造と、
実際の学級で使いやすい具体例を通して、
「1単元の流れ」を分かりやすく整理します。
生活単元学習の授業づくりが難しく感じる理由

生活単元学習が難しく感じられる理由には、次のようなものがあります。
- 教科のように「45分×○時間」という決まった型がない
- 行事や活動と見た目が似ていて、違いが分かりにくい
- 評価の視点がイメージしにくい
その結果、
「これで授業になっているのかな?」
と不安になりやすいのです。
だからこそ、
生活単元学習には“共通の型”が必要になります。
授業づくりは「活動」から考えない
生活単元学習でよくある失敗は、
「遠足があるから単元にしよう」
「行事があるから生活単元にしよう」
と、活動から先に考えてしまうことです。
授業づくりで最初に考えるのは、
- この子たちに、今どんな力が必要か
- その力は、どんな生活場面で使われるか
活動や行事は、
力を育てるための“手段”です。
この順番を押さえることで、
活動は自然と学習に変わっていきます。
生活単元学習・1単元の基本構造【4つのステップ】

生活単元学習は、
次の4つのステップで組み立てると、授業として整理しやすくなります。
① 見通しをもつ(導入)
目的
・安心して活動に参加できる状態をつくる
具体的な関わり
- 写真や絵カードで「何をするか」を伝える
- 活動の流れを視覚的に示す
- ゴール(終わり)を明確にする
見通しがあることで、
不安が強い子どもも落ち着いて取り組みやすくなります。
② 準備・計画する
目的
・活動に必要な力を、事前に使う経験をもつ
具体的な関わり
- 必要な物を考える
- 役割を決める
- 数や量を一緒に確認する
この段階で、
国語(話す・聞く)、算数(数・量)、自立活動(見通し)
といった学習内容が、自然に含まれてきます。
③ 実際にやってみる(活動)
目的
・生活場面で、実際に経験する
具体的な関わり
- 教師はやり方を教えすぎない
- 失敗や戸惑いも、経験として大切にする
- 必要に応じて、そばで支える
ここでは、
完璧にできることよりも「やってみた経験」を重視します。
④ 振り返る(まとめ)
目的
・経験を「学習」として定着させる
具体的な関わり
- 写真を見ながら活動を振り返る
- 「何をしたか」「できたこと」を整理する
- 簡単な言葉やカードで記録する
振り返りがあることで、
経験は次の学びにつながっていきます。
【特別支援学級】生活単元学習の授業づくりの具体例

ここからは、生活単元学習を実際の授業としてどう形にするかを、
具体的な単元例を通して紹介します。
生活単元学習は特別な活動を用意しなくても、
日常の中にある場面を学習として整理することで、十分に成立します。
大切なのは、どの単元でも共通する
見通し → 準備 → 活動 → 振り返り
という流れを意識することです。
以下の具体例は、そのまま真似するのではなく、
自分の学級や子どもの実態に合わせてアレンジするための参考として読んでみてください。
【具体例①】買い物に行こう(生活に直結した単元)

単元のねらい
- 必要な物を選ぶ
- お金を扱う
- 人とやりとりをする
単元の流れ
1.写真で買う物を確認する
2.数や金額を一緒に確かめる
3.実際に店で購入する
4.写真を見ながら振り返る
見取れる力
- 見通しをもって行動できた
- 言葉や身振りでやりとりしようとした
- 数を意識して行動できた
【具体例②】お楽しみ会をしよう(行事系・生活単元学習)

お楽しみ会は、
ただのレクリエーションで終わりやすい活動です。
生活単元学習では、準備から振り返りまでの過程を学習として扱います。
単元のねらい
- 見通しをもって活動に取り組む
- 自分の役割を理解する
- 友だちと同じ活動を共有する
単元の流れ
1.やる内容を写真や絵で確認
2.役割を決め、準備をする
3.決めた流れで会を行う
4.写真で振り返り、できた行動を確認
見取れる力
- 役割を意識して行動しようとした
- 集団の中で安心して過ごせた
【具体例③】給食の準備をしよう(日常生活系)

単元のねらい
- 身の回りのことを自分で行う
- 手順を理解して行動する
単元の流れ
1.準備の順番を確認
2.配膳を体験
3.振り返りでできたことを確認
短時間・日常的な活動でも、
立派な生活単元学習になります。
教科はどう整理する?(あとからで大丈夫)
生活単元学習中に、
「これは算数」「これは国語」と分ける必要はありません。
授業後に、
- 数を扱った
- やりとりがあった
- 見通しをもって行動した
と整理すれば十分です。
評価につなげる見取りの視点
生活単元学習の評価で大切なのは、
前回と比べてどう変わったかを見ることです。
- 行動が安定してきた
- 関わりが増えた
- 安心して参加できるようになった
こうした変化が、
通知表や個別の指導計画につながっていきます。

【特別支援学級】生活単元学習の授業づくり|1単元の流れと具体例のよくある質問(Q&A)
以下は、「生活単元学習の授業づくり|1単元の流れと具体例」の記事の Q&A(5つ) です。
- 生活単元学習の授業は、何時間くらいで考えればよいですか?
-
生活単元学習には、教科のような「○時間」といった決まりはありません。
大切なのは時間数よりも、見通し → 準備 → 活動 → 振り返りという一連の流れを経験できているかどうかです。
短時間でも、この流れがあれば1単元として成立します。 - Q2.毎回、校外に出たり特別な活動をしないといけませんか?
-
その必要はありません。
生活単元学習は、日常生活の中の活動でも十分に行えます。
給食の準備、掃除、朝の会の役割など、普段の生活場面こそ、子どもにとって意味のある学習になります。 - 子どもによってできることの差が大きい場合、どう進めればいいですか?
-
同じ活動をしていても、ねらいは子どもごとに違っていて構いません。
ある子は「参加する」、別の子は「役割をもつ」など、
目標を個別に設定することで、同じ単元でも無理なく進められます。 - Q4.授業中に「これは国語?算数?」と聞かれたらどう説明すればいいですか?
-
生活単元学習では、教科を分けて教えるのではなく、
生活の中で教科の力を使うという考え方を取ります。
授業中に無理に教科名を意識する必要はなく、
授業後に「数を扱った」「やりとりがあった」と整理すれば十分です。 - うまくいかなかった単元は、失敗でしょうか?
-
失敗ではありません。
生活単元学習では、思い通りにいかなかった経験そのものが学びになります。
うまくいかなかった理由を振り返り、次に生かすことが、
授業づくりの質を高めていきます。
「生活単元学習の授業づくり|1単元の流れと具体例」まとめ|生活単元学習の授業づくりは「型」をもつと楽になる
生活単元学習は、
毎回ゼロから考える必要はありません。
- 見通し
- 準備
- 活動
- 振り返り
この4つの型を意識するだけで、
活動は学習として整理され、
担任の負担もぐっと減ります。
まずは、
「この子たちの生活に、今どんな力が必要か」
そこから、1単元を組み立ててみてください。





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