特別支援学級で研究授業を組むとき、
通常の学級とは違う難しさがどうしても出てきます。
- 学年も学習の進み具合もバラバラ
- 指導案の形式が実態に合わない
- 「学年相当で」と言われると組みにくい
- 発表会的な授業は避けるよう求められる
- 評価基準が曖昧で、何を根拠にすればいいか悩む
さらに、研究授業の日になると、
普段はよく話す子が急に黙り込む というのも珍しくありません。
この記事では、
そうした“支援学級ならではのリアル”を前提にした
研究授業のつくり方と成功しやすい流れをまとめました。
研究授業は「実態を見せる授業」だと割り切る

研究授業で一番苦しくなるのは
「いつもの100%の姿を見せなきゃ」と無理をすること。
特別支援学級の子どもたちは、
環境の変化にとても敏感です。
参観者の視線や教室の空気が変わるだけで、表情も行動もガラッと変わります。
実例:普段はよく話すのに、研究授業では固まった子
いつもは、
「先生きいて!」「昨日ね…!」
と自分から話題を持ってくる子がいました。
ところが研究授業の日、
教室には見慣れない大人が数人。
その瞬間、
その子はぴたっと黙り込んでしまいました。
質問しても
「……」
小さくうなずくのがやっと。
このとき先生が気づいたのは、
研究授業では“普段の姿をそのまま出せる子”の方が少ない
子どもの沈黙は「失敗」ではなく「自然な反応」
という大事な視点でした。
実態の整理は「できる・できない」ではなく“負荷”で考える

支援学級の子どもたちは、
同じ「書けない」でも負荷のかかり方が違います。
低学年の傾向
- ひらがなを思い出す負荷が大きい
- 書いているうちに音と文字がずれて混乱しやすい
中学年の傾向
- 「何を書けば…?」で手が止まる
- 経験の言語化に強い不安が出る
高学年の傾向
- 伝えたいことはある
- でも “文にする力” が追いつかない
- 経験 → ことば → 文 → 気持ち のつながりが難しい
ポイント
“どこに負荷がかかっているか” をつかむことが、研究授業のねらい作りの核心になる。
ねらいは「学年」ではなく「課題」からつくる

特別支援学級でよくあるのが、
「学年別に目標を立てると、誰にも合わない」問題。
例えば日記を題材にすると、
1年は「単語→文」、
4年は「文と文のつなぎ」、
6年は「経験から気持ちへ広げる」
というように、必要な力が全然違います。
だからこそ、学年で揃えない。課題で揃える。
これが支援学級の研究授業では最も成功しやすい方法です。
見せ場はひとつだけに絞る

研究授業で失敗しがちなのは、
「せっかくの機会だから」と内容を盛り込みすぎること。
支援学級の研究授業は、
ひとつに絞るほど安定します。
絞り方の例
- 書き始めの不安を減らす支援
- 経験を短い対話で引き出す
- つなぎ言葉を1つだけ使ってみる
- 最後の振り返りで“自分の言葉”を引き出す
「今日はこれが見えれば成功」 とひとつ決めておくと、
授業がぐっと締まり、参観者にも伝わりやすくなります。
指導案は「実態 → 課題 → 手立て → ねらい」を書く

指導案で一番伝わるのは、
形式の美しさではなく、理由が分かること。
例えば、普段は話せるのに研究授業で固まる子の場合——
【実態】
- いつもは話せるが、人前だと沈黙しやすい
【課題】
- 経験を言葉にするまでの負荷が一気に上がる
【手立て】
- 書く前に、先生の“3つの質問”(いつ・どこで・何した)で口火を切る
- 話しにくい場合は、カードで“話題を選ぶだけ”にする
【ねらい】
- 安心できる形で経験を言葉に変換し、書く活動につなげる
この因果を書くと、
「なぜこの支援が必要なのか」が参観者にも分かりやすくなります。
評価は「変化」「プロセス」「本人比」で行う

通常の学級では“正確さ”や“学年到達度”が軸になりますが、
特別支援学級ではそれが本質ではありません。
● 大事にしたい視点
- 1行→2行などの 変化
- 話す・思い出す・つなぐなどの プロセス
- 昨日より少し書けた、を認める 本人比
研究授業の場合は、
この「本人比」が一番伝わりやすい評価軸になります。
ICTやAIは「何のために使うか」を明確にする

ICTのルールが曖昧で迷う学校も多いですが、
研究授業でICTを使うかどうかはとてもシンプルです。
● 使う理由を説明できればOK
例)
- 作品をスクリーンに映して振り返りを見える化
- 下書きを写真で残して成長記録に
- 教師がAIで個別に合わせたモデル文をつくる
ICTを使うこと自体が目的にならないようにする ことがポイントです。
研究授業は「単発のイベント」にしない方が成功する

支援学級では、単発の“見せる授業”は組みにくいです。
おすすめは、その後の学習につながる授業 にしてしまうこと。
例)
- 冬休みの日記につながる文章指導
- 学期末の振り返りに向けた書く活動
- 生活単元の記録づくりへの導入
「この授業が子どもの生活にどう役立つか」を言えると、
研究授業の価値がぐんと上がります。
Q&A|特別支援学級の研究授業でよくある悩みと答え

- 研究授業の日だけ、普段できることができなくなるのは失敗ですか?
-
失敗ではありません。ごく自然な反応です。
支援学級の子どもたちは、教室に“見慣れない大人”が入るだけで緊張度が一気に上がります。
普段はよく話す子が黙り込んだり、
落ち着いて座れる子が立ち歩いたりすることもあります。大切なのは、「その姿が悪い」ではなく
“その瞬間に必要な支援が何か”を示せること。参観者に対しても、
「環境変化があるとこのように反応します」
「今日はこの支援を通して安心をつくります」
と説明できれば十分に価値のある研究授業になります。 - 学年がバラバラで、ねらいを統一できません。どうすればいいですか?
-
ねらいは統一しなくて大丈夫です。
“課題別”でつくるのが支援学級の自然な形です。一般学級のように学年別で揃えると、どの子にも合わなくなります。
例)
- 書き始めが不安な子 → モデル文から選ぶ
- 経験と言葉が結びつかない子 → 対話で言葉を引き出す
- 文が続かない子 → つなぎ言葉をひとつ使う
「一人ひとりの課題が、一歩進む授業」これが研究授業にふさわしい姿です。
- 評価はどこを見ればいいのですか? 行数ですか? 正確さですか?
-
行数や正確さよりも、“変化とプロセス”を見ます。
支援学級では、“本人比でどう伸びたか” が最も重要な視点です。
見たいポイントはこの3つ。
- 変化:1行→2行、単語→文など
- プロセス:対話、下書きの工夫、思い出す努力
- 本人比:その子にとっての小さな一歩
研究授業でも、この「小さな一歩」を言語化できれば十分に評価として成立します。
- 指導案が形式だけになり、実態と合いません。どう書けばいいですか?
-
「実態 → 課題 → 手立て → ねらい」の因果を書くと強い指導案になります。
例)
- 実態:人前だと話しにくく、経験の言語化が難しい
- 課題:書き始めるまでの負荷が大きい
- 手立て:先生が“3つの質問”で経験を引き出す(いつ?どこで?何した?)
- ねらい:安心できる形で経験を言葉にし、書く活動につなげる
このように「なぜその支援が必要か」が分かるだけで、
研究授業としての説得力が段違いに上がります。
- 研究授業にICTやAIを取り入れた方がいいですか?
-
無理に入れる必要はありません。
ただし、“目的が明確”なら大きな味方になります。例)
- 子どもの作品を映して、振り返りを見える化
- 写真で成長の記録を残す
- 教師がAIで“個別に合ったモデル文”を作成する
重要なのは、「子どもの力を伸ばすために使う」という目的が語れること。
道具ではなく“支援”が主役です。
【特別支援学級】研究授業のつくり方|学年バラバラでも成功する“実態に合わせた指導案と見せ方”のまとめ

特別支援学級の研究授業で大事なのは、
一般の学級のような“完璧に整った授業”ではありません。
- 実態を丁寧に把握する
- ねらいは課題からつくる
- 見せ場はひとつだけ
- 因果のある指導案を書く
- 評価は本人比・変化・プロセス
- ICTは目的に沿って使う
- 単発で終わらせず、生活や学習に結びつける
そして何より——
研究授業で話せなくなった子の姿も、その子の“実態”として尊い。
その瞬間に必要な支援を言語化できる先生こそ、
本物の特別支援学級担任です。




コメント