千葉県君津市の猟師工房ランドで解体見学をさせていただきました。
解体の工程や外来種駆除の現実、そして「命の学校」と呼ばれる取り組みを通して、私は改めて「命の授業」とは何かを考えることになりました。命は大切——その言葉だけでは足りない現実が、そこにはありました。
きっかけは、商工会主催の創業塾で出会った友人でした。
その友人は、犬のおやつを作り、勝浦朝市などで販売しています。今回、狩猟で得られた肉を活用して商品づくりに取り組むことになり、私から「見学させていただけませんか」と声をかけさせてもらいました。
私はこれまで「命の大切さ」について考える立場にいましたが、実際の猟師さんや解体現場を見る機会はありませんでした。
だからこそ、自分の目で確かめたいと思い、同行させていただきました。
君津市の狩猟現場で見たこと

キョンの解体の工程については、繊細に感じる方もいらっしゃると思いますので、ここでは詳細には触れません。
ただ一つ言えるのは、決して見世物ではなく、静かで、淡々と、丁寧に行われていたということです。
命を扱う現場は、想像していたよりもずっと落ち着いていました。
印象的だったのは、その日の肉が犬のおやつとして活かされる流れです。
毛がついているため、
・丁寧に洗う
・しっかり干す
・数日間冷蔵庫で保管
・その後に加工
という工程を経て商品になります。
友人は、人間が食べても問題のない「ヒューマングレード」の基準で、保健所の許可を得た加工場で作業をしています。
思いつきではなく、制度の中で、衛生管理を徹底しながら命を活かす。
そこには「処分」ではなく、「無駄にしない」という姿勢がありました。
キョンはどこから来たのか

今回見学したキョンは、もともと日本にいた生き物ではありません。
千葉県で野生化しているキョンは、かつてのレジャー施設
行川アイランド
から逸出した個体が起源といわれています。
人間の都合で持ち込まれ、
管理を離れ、
繁殖し、
そして今は駆除対象となっている。
持ち込んだのは人間です。
では、その責任をどう引き受けるのか。
キョンは自分でここへ来たわけではありません。
増えた背景にも、人間社会の影響があります。
駆除する・しないという議論の前に、
この出発点をどう考えるのかという問いが、私の中に残りました。
外来種駆除の現実

この地域では、年間約5,000頭もの獣が捕獲されるそうです。多くは外来種や農作物被害を出す個体です。
イノシシが田んぼに入り、体に泥をつけることで、お米ににおいが移り、売り物にならなくなることもあると聞きました。
農家にとっては生活に直結する問題です。
対策として電気柵が設置されていますが、それも万能ではありません。
電気柵は常に電源を入れておく必要があります。しかし、草刈りやメンテナンスのために一時的に電源を切ることもあります。そのわずかな時間に侵入したイノシシは、「ここは怖くない」と学習してしまうことがあるそうです。
さらに、法律上、命に関わる強い電流を流すことはできません。あくまで驚かせるための仕組みです。
設備があるから安心、ではない。
生き物は学び、対策の隙も学ぶ。
現場の難しさを実感しました。
また、放射能検査の提出義務があり、一定量の肉を検査に回さなければならないため、小型個体では採算が取りづらいという現実もあります。
駆除は必要。でも、猟師が食べていける仕組みは十分とは言えない。
命の問題は、制度や経済の問題とも深く結びついていました。
命の学校で投げかけられる問い

狩猟工房ランドの猟師である、原田さんは「命の学校」という取り組みもされています。
子どもたちに、こう問いかけるそうです。

「これをどう思いますか?」
イノシシの親が罠にかかったら、ウリ坊はどうなるのか。
駆除しなければ農家はどうなるのか。
正解を教えない。
まず、考えさせる。
印象的だったのは、田舎の子どもたちは「経済動物」「外来種」「愛玩動物」の違いを理解しているという話でした。
それは、祖父母が困っている姿を目の当たりにしているから。
生活と結びついているからこそ、感情だけで語らないのだと感じました。
私の中で答えが出なかったこと
命は大切です。
けれど、その言葉だけでは届かない現実があることも、今回の体験で知りました。
キョンは、自分でこの土地に来たわけではありません。
増えた背景にも、人間の選択がありました。
そして今、その命をどう扱うのかを、私たちは考えています。
マグロの解体ショーは平気なのに、鹿やキョンには「かわいそう」と感じる。
その矛盾も、まだ整理できていません。
答えは、すぐには出ないのかもしれません。
けれど、現場を見て、話を聞き、空気を感じたことで、
以前よりも少しだけ、問いが深くなりました。
命をどう守るのか。
責任をどう引き受けるのか。
その答えを急がず、
考え続けること自体が、いまの私にできることなのかもしれません。
体験が視野を広げる

今回、原田さんに直接お話を伺い、狩猟現場を見学させていただいたことで、私の視野は確実に広がりました。
ニュースや数字で知るのと、実際に現場で話を聞くのとでは、受け取り方がまったく違います。
体験があるからこそ、問いが深くなる。
答えはまだ出ていません。
でも、以前よりも深く考えられるようになりました。
だからこそ、このテーマをこれからも大切に考え続けていきたいと思います。
あなたは、どう思いますか。




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