文章を書くことに苦手意識がある子どもたち。でも、卒業文集は特別支援学級の子供たちにとって、かけがえのない思い出を残せる大切な機会です。私の22年の特別支援学級担任の経験から、子供一人一人の得意分野を活かしながら、楽しく文集作りを進められる具体的なヒントをお伝えします。
写真やイラスト、ICTの活用から、子供の心に寄り添った声かけまで、明日から使える実践的なアイデアが満載です。「書けない」から「書きたい!」へ。子供たちの笑顔があふれる文集作りを、一緒に考えていきましょう。
子どもの実態に合わせた文集作りのアプローチ
書くことが苦手な子どもへの支援方法
文字を書くことへの抵抗感は、多くの子供たちが抱える課題です。ICレコーダーでの録音→文字起こし、写真を見ながらの口頭での思い出語り→教師が代筆、といった方法で、まずは自分の思いを表現することから始めましょう。パソコンやタブレットの活用も効果的です。
気持ちの表現が難しい子供へのサポート
「楽しかった」「うれしかった」「がんばった」などの気持ちカードを用意し、写真を見ながら選んでもらうことで、感情表現のハードルを下げることができます。表情イラストと組み合わせることで、より直感的に気持ちを表現できるようになります。
集中が続かない子供への工夫
15分程度の短い時間で区切り、その日の目標を明確にします。例えば「今日は運動会の写真を3枚選ぼう」「今日は給食の思い出を2文書こう」など。達成感を味わえるよう、小さな目標設定が重要です。
使える!文集作りの実践テクニック
名刺サイズに写真を印刷して国語ノートに順番に貼るのもおすすめです
写真を使った思い出の引き出し方
学校生活の写真を時系列で並べ、視覚的に思い出を整理します。行事ごとにフォルダ分けしておくと、子供が自分で選びやすくなります。写真を見ながら「このとき、どんな気持ちだった?」と具体的に聞くことで、より豊かな表現を引き出せます。
ICレコーダーを活用した表現支援
普段の会話のように自然に思い出を語ってもらい、それを文字に起こします。話している時の表情や声の調子からも、その時の気持ちが伝わってきます。文字起こしした内容を一緒に読み返しながら、より適切な表現に整えていきます。
イラストと組み合わせた楽しい文章作り
文章だけでなく、イラストや写真、切り絵など、その子の得意な表現方法を取り入れます。例えば、一枚の思い出の絵に短い文章をそえる形式や、マンガ形式で表現するなど、視覚的な要素を効果的に活用します。
心をつかむ!声かけのポイント
いいね!すてき!最高!
やる気を引き出す言葉がけのコツ
「これ、面白い思い出だね!」「この写真のとき、すごく頑張ってたよね」など、具体的な場面を挙げながら共感的に声をかけます。完成形をイメージできるよう、先輩の文集を見せることも効果的です。
困ったときの対処法
行き詰まったときは、いったん別の活動に切り替えることも大切です。無理に書かせようとせず、「また明日考えよう」と余裕を持たせます。その際、次回はどんなことから始めるか、具体的な見通しを持たせることがポイントです。
保護者との連携のヒント
家庭でも思い出を語り合ってもらえるよう、テーマを伝えておきます。「明日は修学旅行の思い出を書く予定です」と事前に連絡することで、家庭でも話題にしてもらいやすくなります。
文集作りの進め方タイムライン
写真がなくって焦らないように
1学期からの準備で焦らない
4月の段階から、行事の写真撮影を意識的に行います。子供たちの生き生きとした表情や、達成感を感じられる場面を中心に記録していきます。夏休み前には、おおまかな構成を考えておきましょう。
無理なく進める月別スケジュール(例)
- 9月:写真の整理と選定開始
- 10月:行事ごとの短い文章作り
- 11月:文章のブラッシュアップ
- 12月:レイアウト決め
- 1月:清書と見直し
- 2月:製本作業
卒業文集を特別な思い出に
実は毎年楽しみにしてるよ
子どもの個性を活かしたページづくり
文章量や表現方法は、一人一人の実態に合わせて柔軟に設定します。写真中心のページ、イラストメインのページ、短い文章をちりばめたページなど、その子らしさが伝わる構成を考えます。
みんなで作る楽しい雰囲気づくり
個別の作業も大切ですが、時には友だちと思い出を語り合う時間を設けます。「あのとき、一緒に〇〇したよね」という会話から、新たな思い出が蘇ることもあります。
完成後の活用アイデア
卒業式での紹介や、在校生への贈る言葉として活用することで、より思い出深いものになります。また、進学先の先生方との引き継ぎ資料としても活用できます。
文集作りは、一人一人の子どもの成長を振り返り、新たな気づきを得られる貴重な機会です。焦らず、じっくりと取り組んでいきましょう。
対応Q&A
よくある課題とその解決方法をまとめています。
- 全く文章を書こうとしません
-
まずは書くことへのハードルを下げましょう。
・その日の給食メニューなど、身近な話題から始める
・写真を見ながら「楽しかった?」「どんなことしたっけ?」と会話形式で引き出す
・ICレコーダーに録音して、後で文字に起こす方法を試す
・絵や写真に吹き出しをつけるところから始める - 書き始めると消しゴムで消してばかりです
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完璧主義の傾向がある場合の対応です。
・下書き用のメモ帳を用意し、「ここは練習だよ」と伝える
・鉛筆ではなくホワイトボードを使って気軽に書き直せるようにする
・タブレットを活用し、デジタルでの入力を試してみる
・「上手く書けなくても大丈夫」と繰り返し伝える - 集中が続かず、すぐに席を立ってしまいます
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無理なく取り組める環境を整えましょう。
・タイマーを使って15分など、短い時間で区切る
・「3文書いたら休憩」など、明確なゴールを設定する
・落ち着ける別室や、ついたてのある場所を用意する
・好きなキャラクターのシールなど、モチベーションを上げる工夫をする - 保護者から「もっと書けるはず」と言われます
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丁寧な説明と連携が必要です。
- 日頃の学習の様子を具体的に伝える
- 個別の教育支援計画をもとに、適切な目標設定を共有する
- 家庭でできるサポート方法を提案する
- できているところに注目して評価する視点を共有する
特別支援学級の先生必見!卒業文集をスムーズに進めるためのガイドのまとめ
「子どもの「できた!」を大切に」これにつきます。
卒業文集づくりは、子供たちの成長を形にする貴重な機会です。文章を書くことが難しい、気持ちを表現することが苦手、集中が続かないなど、様々な課題に直面することがありますが、それは決して「できない」ということではありません。
一人一人の得意なことを活かし、ICTの活用、写真やイラストとの組み合わせ、会話から始めるなど、その子に合った方法を見つけることで、必ず道は開けます。大切なのは、子供たちが「自分の思いを伝えられた」という達成感を味わえることです。
焦らず、じっくりと。時には立ち止まることも必要です。小さな「できた!」を積み重ねながら、子供たちの笑顔とともに、温かい思い出のページを作り上げていきましょう。
完成した文集は、子供たちの成長の証であり、新たな一歩を踏み出す力となります。そして何より、特別支援学級での日々が、かけがえのない時間だったことを伝える大切なメッセージとなるはずです。
最後に一言。
完璧な文集を目指すのではなく、その子らしさがあふれる文集を。それが特別支援学級の卒業文集づくりの真髄ではないでしょうか。
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